第3話 ステータス オープン

 さてさて、反省はここまでとして、そろそろ本題へ入ろう。


 僕は異世界転生を果たした。

 ということは、当然あるであろう異世界チート。

 もしくは、僕が王子であることから乙女ゲームだったりするかもだけど、まあ試すべきだよね、アレを。

 女神様に出会った記憶はないけれど、きっとあるはず。いや絶対にある。


 僕は心の中であの言葉を念じてみた。


(ステータス オープン)


―――――――――――――――――

 ステータス


 (名前) マルクス・ルナ・バトラウス (年齢)五歳 (性別)男

 (所属) バトラウス王国第三王子


 (能力)

  (ちから)  1/99

  (スタミナ) 1/99

  (知力)   1/99

  (走力)   1/99

  (遠投力)  1/99

  (守備力)  1/99

  (長打力)  1/99

  (指揮力)  1/99


 (技能) 鑑定 1/10

 (称号) 球界のプリンス


――――――――――――――――――


 おおっ、でた! 

 ほんとに出た。


 へえ~、ステータスウィンドウってこんな感じなんだ…………って、いやいや、ちょっと待て。

 おかしいだろ、これ。


 ちからとスタミナ、知力は、わかる。

 けど、走力? 遠投力? 守備力? 長打力?


 これって全部、野球のステータスだよね。しかもオール1って。そりゃあまだ五歳だし、なんも鍛えてないけどさ。


 でも、それよりもっと気になるのが称号。

 球界のプリンスって何? 

 僕は王子様だけど、違うでしょ。

 だいたいステータスっていったら、体力に魔力、それと攻撃力や防御力だよね。鑑定はうれしいけど……。

 それに僕は高校生止まりだし、球界のプリンスどころじゃないわ! ハアハアハア……。


「マルクスさま。いかがなさいました?」


 おっと、いけない。興奮してメアリーがいたこと忘れてた。


「ううん、なんでもないよ」


 僕がそう伝えても、心配そうな彼女。

 昼間、頭を打っているだけに、体調の変化を気にしているようだ。


「あら、マルクスさま、汗をかいていらっしゃいますね。御寝間着を着替えましょうか」


「あ、うん」


 メアリーからそう指摘され、僕は背中に感じる嫌な感触に気づく。

 どうやら想像以上に興奮していたらしく、全身汗だくとなっていた。


 彼女は素早く僕の服を脱がせると、身体を拭いてから新しい服へと着替えさせてくれる。

 流石に手慣れたもので、僕はすぐに布団の中へ戻された。


「ありがとう」


「はい、ゆっくりお休みなさってくださいね」


「うん」


 ……って、こんなの好きになっちゃうよ。


 僕の精神年齢は18歳だからね。

 同年代の子と付き合うより、彼女くらいが合っていると思う。


 それで僕は良くないと思いつつ、メアリーのことをもっと知りたくて……。


(ごめんね。鑑定)



 ――――――――――――


 ステータス


 (名前)  メアリー・ラクソニール (年齢)十五歳 (性別)女

 (所属)  ラクソニール伯爵家長女

       マルクス・ルナ・バトラウスの侍女


 (能力)

  (ちから)  5/12

  (スタミナ) 6/15

  (知力)   8/20

  (走力)   3/08

  (遠投力)  2/10

  (守備力)  3/07

  (長打力)  2/05


――――――――――――


 ん、んんん……ふぅ……。

 

 えっと、とりあえず、メアリーって貴族だったんだ。

 王族に仕える侍女だったら、それも当然か。

 それに、上位貴族のお嬢様が行儀見習いで就いたりするって、ラノベで読んだ気もするし。

 でも、侍女って、確か女性につく専属メイドのような存在だよね。

 どうして僕の侍女なんだ?

 

 う~ん、わからん。

 

 まあ、それよりも……またこれか。

 なんで彼女にまで適用されるかな。

 僕と比べて分母がだいぶ小さいみたいだけど、こっちがマックスってことで合ってるよね。

 メアリーの場合、分母が小さいから、あそこまででストップって感じかな。


 ただ、これじゃあゲームみたいなステータスだよね。


 …………ん、ゲーム? いや、そりゃあ乙女ゲームの世界かもなんて思ったりもしたけど、まさかそっち? 野球チームを作ろう的な……。


 うん、この件は一旦放置で。

 考えないようにしよう。


 変なことは忘れて、僕は再び眠りに就こうと目を閉じる。

 彼女もそれを察したのか「お休みなさいませ、マルクス様」と一声かけて、部屋の隅に用意されたソファーへと戻っていった。


 けれど、『ピコーン』と頭に直接響く音で、僕の眠りは妨げられるのだった。

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