第26話 カグヤヒメ

 カグヤの襲来に唯一対抗できる兵器を生みだせるドクターは、今の地球にとって要と言える存在だ。だが、もし彼女が望んでこの状況を生みだしているのだとしたら?


「完全に、黒幕じゃないの……!」


 渇いた嗤いが、地下兵器庫にこだまする。


「あははははっ! なにが『唯一愛を知る存在』よ! 私達、完全に奴の掌の上だったってわけ? ……やっぱり。菫に対する執心、贔屓、度を越した優しさ、そして誘惑――それも全部、あの子のパイロットとしての才能を危惧し、素直さを買ってのことだったのね……!」


 『愛』を知っているからこそ、それを利用し、人を手玉に取ることができる。

 それこそが、奴の魔性の正体だったのだ。


 そうして、『愛』を知る可能性のある存在――『感情』を持つ狂人たちは、ユーカリドラッグでその感情を抑制し、自意識を持たない『コアラ』へと変貌させていく。あたかもそれが、『世界平和』に繋がるかのように吹聴し。


 朝顔は思わず、腹を抱えて笑ってしまった。


「あは! あははは! もしこの賀具夜媛命カグヤヒメってのが奴の本名なら、カグヤの襲来だなんてとんだ茶番だわ! 故郷の技術を利用して、何もかもが舞台上の喜劇にして悲劇ってわけ!?」


 朝顔は、奥歯を軋ませ拳を握りしめる。


「……許せない。人の気持ちを、菫の気持ちを……なんだと思っているのよ、あいつ!!」


 ◇


 一方、その頃――


 真っ白な花の供えられた病室には、透明な管を引きずりながら、身体を起こす影があった。


「んああ……よく寝たぁ……」


 藤紫の髪を掻き上げ、長い睫毛をしばたたかせて、腕輪型端末からの信号を確認する。


(兵器庫でカードキーを使った形跡が? ん~、菫の仕業じゃあナイよねぇ? あの子にはそんな知識も懐疑心もないし。僕の指示もなしに、兵器庫を探る理由がない。それに、サナトリウム内最強であるあの子からカードキーを取り上げられる人物なんて、限られているし)


「んふふ。菫を騙して悪いことをする優等生は……誰かなぁ?」


 その不敵な笑みは、どこか楽しそうにすら見えた。


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