第18話 どうしてKOALAに乗るの?

「ファーストキスは! 好きな奴とするもんなんだよ!!」


「って、こないだ授業で習ったわね」


 ツカツカ、と遅れて来た朝顔がすました顔で言う。


「へー。さすがパンダ組は学習が進んでるなぁ。で、誰なんだよ、菫の好きな奴って」


「バッ――!! ……っかじゃねぇの!? 誰がてめぇみたいな朴念仁……!!」


「あら。もう『ドクターだ!』って即答しないのね?」


 朝顔のつっこみに、菫は顔を真っ赤にして俯く。

 そんな様子に、かぐや姫はさも不思議そうに首を傾げた。


「貴方たちは、何故、KOALAに乗っているんですの?」


「「??」」


「そこの朝顔さんに聞きましたわ。私達のような異星人を迎撃する為に、貴方がたはKOALAという兵器に乗るのだと。私達は『運命の人』を探すために戦いますけれど、貴方がたは、何の為に命を賭してまで……そうやって笑い合える心があるのなら、戦いからは逃げてしまえばよいのではないのですか?」


 その問いに、ドクターを失った菫は即答できずにいる。

 だが、同じくドクターを失った俺の脳裏には、彼女を守りたい一心でカグヤに立ち向かった、あのときの熱い気持ちが燻っていた。


 するりと、言葉が口を突いて出る。


「俺は、コアラになりたいんだ……」


「コアラ?」


「俺は闘争心を捨てきれない狂人だけど、KOALAに乗って戦うときだけは、平和の象徴――コアラになれる気がしてる。この手で守りたい人を守って……そうだ。俺は、俺には、守りたい人がいるから……KOALAに乗るんだ」


 その言葉に、かぐや姫は不意に涙を流す。


「『愛』ですわ……」


「へ――?」


「それこそ、私の探し求めていた答え! それを、その感情を持っている貴方こそ、やっぱり私の運命の人ですわ!!」


 ぎゅう、と抱き着くかぐや姫に目を白黒させるが、今度は誰も止めたりしない。その場にいる菫、ナナオ、朝顔の三人は、呆然としたように俺のことを眺めているのだった。


  ◇


 結局それから、京太はかぐや姫とデート――ならぬ、サナトリウム内の案内をする形で離脱した。朝顔は朝顔で、ドクターの銃撃犯について再度調べたいことがあるとかなんとかいって、その場にはナナオと菫だけが取り残されてしまう。


 『愛』――未だ知らぬその感情を、京太は本当に手に入れたのだろうか。

 ふたりの中にはもやもやとした感情が渦を巻く。

 菫は、不意に尋ねた。


「ナナオたんはさぁ、あいつのどこが好きなンだ?」


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※あとがき

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