第17話 ファーストキス
「ドクターを撃ったのは、本当にキミじゃないんだな?」
「無論ですわ。だって私は、その頃にはこの独房に囚われていましたもの」
「そういえばそうだった……!」
だから、朝顔も「気になる点がある」と言っていたっけ。だから、囚われたまま人を殺す術を持つ種族なのかもしれないって、気を付けろって。
(俺には、そうは思えないけどな……)
いくらカグヤに乗ってこの星を侵略に来たのだとしても、悪い子には見えない。
どうしても見えないんだ。
そう思ってしまう俺は、きっと『聞き出し役』失格なんだと思う。
だが、少しずついろんな話をしていくうちに、かぐや姫のいた星――『月』では、争いが絶えず行われ、その闘争から逃れるために時折脱出を試みる者がいるということがわかった。
かぐや姫は、『他惑星への特攻兵』というその役割に自ら志願することで、故郷を無理にでも離れ、運命の人を見つけることに賭けたのだと言う。
「月には、男子がほとんどいないんですの。生まれる者は九割が女子。僅かな男子を巡って、国内はいつも血で血を洗う争いに満ちている。そんな日常が嫌で、それでも、運命の殿方に憧れる気持ちを抑えることはできなくて。他惑星へ運命の人を探しに行く……それが、私達の行う『特攻』なのですわ」
「ってことは、今まで変なタイミングでカグヤ達が帰っていったのは……」
「『なんか違う』と思ったからなのでは? もしくは、手傷を負わされ、故郷へ戻るエネルギーギリギリで脱出をしたとか。でもまさか、『負けること』で運命の人に辿り着くことができるとは、私、思ってもみませんでした!」
すりすりと懐っこく擦り寄るかぐや姫の目はハートだ。だが、俺としては愛だか恋だかはよくわからなくて、申し訳ないけれど、俺の運命の人はこの子ではないような気がしている。
「『恋はいつだってすれ違い』か……」
「なんですの? その言葉」
「昔、ドクターが言っていたんだよ。だからこそ『愛』は尊く、『恋』は楽しいんだってさ」
「??? よくわかりませんけれど、すれ違うのなら、無理にでも合わせてしまえばいいのではなくって? ほら、こういう風に……」
そう言って、かぐや姫は鎖の付いたままの手で俺の両頬に手を添えた。
その唇が、俺の唇を捉えようとしている。
「へ? まさか、キミはキスをするつもりなのか?」
「本に書いてありましたわ。身体から伝わる想いもあるものなのだと。お嫌でしたか?」
きょとん、と尋ねられると、咄嗟に反応に困ってしまう。
だって、キスとかしたことないし。嫌かどうかもわからない。
「……ダメ?」
上目遣いの問いかけに、俺はノーと言えなかった。
「別に、ダメじゃないけど……」
「おおーいっ! ソコはダメって言っとけよぉお!?!?」
「何考えてるんですか、京太さんっ!?!? ソレ、あなたのファーストキスでしょう!?」
聞き耳を立てていたのか、牢の扉をバターン! と開けて、菫とナナオが突進してきた。その様子に、かぐや姫は紅い瞳を見開いて激昂する。
「盗み聞きですの!? なんてはしたない! いいですか、あなた方のような存在をお邪魔虫っていうんですのよ!?」
「るせー! 泥棒猫!!」
「えっと、虫だか猫だかわからないけど、とにかく! 京太さんの意思を無視してキスをするのは良くないと思いますっ!! 私だって、まだしたことないのに……」
もにょりとしたナナオの呟きは最後まで聞くことができなかったが。
俺のファーストキスはふたりによって阻止された。
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