第11話 優しくされたら、好きになっちゃうだろぉお!?
『セルフディストラクト・システム起動』
「セルフディストラクト……ンだそりゃ? 京太ぁ、意味知ってるか? ボク、実は言語学の成績はイマイチで――」
首を傾げるバカ一号。一方で、俺は心臓が飛び跳ねた。
「セルフディストラクト……『自爆』だよバカ!! 離れろ!!」
咄嗟に菫を突き飛ばし、俺はその上に覆いかぶさった。
改造に改造を重ねた攻撃極振りの紙装甲【PANDA】より、俺の【KOALA】の方が幾分防御力があると信じて。
瞬間。凄まじい熱と衝撃を以てカグヤの頭部が爆発した。
「ぐ……!!」
背中が燃えるように熱い。装甲は熱で溶け禿げて、柔らかな灼熱の鋼がコックピットに迫ってくる。その寸前で俺はハッチから飛び出し、べしゃりと地上に落下した。
「わ。バカ! バカバカバカ!」
慌てて、菫もハッチから飛び出す。
もはや歪な鉄塊となった【KOALA02】。その熱から逃れるように、ふたりで支え合って移動する。そうして、瓦礫の片隅で救助を待っていた。変な体勢からハッチ脱出したことで、ふたりとも脚やら腕を怪我してしまったのだ。
それに、眼前でカグヤの頭部が爆ぜたあの恐怖と振動が、俺たちの胸に嫌な余韻を残していて。浅い息を吐きながら、俺は菫に問いかける。
「……大丈夫か?」
その問いに、菫は大きく目を見開いた。
「……ンだよそれ。『大丈夫?』はこっちのセリフだっての。あんな無茶して庇いやがって。あと一枚装甲が薄かったら、てめーの背中も骨ごとまるっと溶けてたかもしれないんだぞ?」
「はは。笑えねぇ」
……でも。なぜだろう。不意に笑いがこぼれてしまった。
こうしてふたり、悪態をつきながらも生きていることに。
「無事でよかったよ」
笑いと共にそう零すと、菫は顔を真っ赤にして、自身の身体を抱き締め縮こまる。
体育座りの膝を抱えて、睨むように、菫色の瞳がこちらを見据えていた。
「……すんな」
「へ?」
「ボクに馴れ馴れしく――優しくすんなっ!!」
「え? あ。いや……なんだよ急に。せっかく助けてやったのに」
不貞腐れたように頭を掻くと、菫は声を張りあげて。
「だって、優しくされたら……好きになっちゃうだろぉお!?!?」
「へっ――?」
「どーしてくれンだよ!? ボクにはドクターがいるのにさぁ! あのな、いっぺんにふたりの人間を好きになるのは浮気なんだ! ダメなんだぁっ! こないだ授業でもそう習ったのに、なのに! 頭ン中にお前の顔がちらついて……目ざわりなんだよぉ! あっちいけっ!」
涙目で訴える菫の様子を、ドクターはモニター越しにニヨニヨしながら眺めていたのだった。
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