地元の誰もが一様に口を閉ざす謎の島に、ヨットの試験航海のために訪れた人のお話。

　硬質な読み心地が魅力の、現代ものの南国ホラー掌編です。

　とにかく文章の質感がすごい。じわじわと静かに恐怖を煽り立てるような描写の数々。

　また、個々の細かな逸話というか、小さないろいろがいちいち不穏なところも好きです。
　あれだけ明るく陽気だった島の人々が、その島の話題を出した途端真顔になるところとか……。

　出航前ですでにこうなのですから、中盤で島にたどり着いて以降はなおのこと。
　得体のしれない何かに苛まれる恐怖を、もう存分に疑似体験させてくれます。

　最後の最後、本当にゾッとさせられるところが素敵なお話でした。

主人公に迫る恐怖に目が離せませんでした。その島の謎、結末をその目に

　トロピカル因習アイランドの企画として書かれた短編となります。
　……何それ？
　照りつける太陽。どこまでも広がる青い海。そこに現れる『因習の島』。そう。その島は、誰も近寄らない。その島の名前すら、口にすることをためらわれる。だってそこはトロピカル因習アイランドであり、禁足地なのだから……というお話です。
　……何それ？
　企画の成立からしてインターネットとしか言いようがありませんが、内容はいたって真面目で、そしてミステリアスな短編です。

　誰も知らない。トロピカル因習アイランドの秘密を探しに行きましょう。ヨットで。