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程なくして川に着けば、早速真命と子どもたちは着物の裾を捲り上げてざぶざぶと川へ入っていく。総司は野菜が入った籠を浅瀬に浸からせていた。

「一くんは、家族とかいるの?」

唐突に総司が訊いてきた。

「父と兄だ。何故そんなことを訊く。」

「相っ変わらず棘だらけだなぁ、君友達いないでしょ。」

「…余計なお世話だ。そんなことを言いたいのではあるまい」

「家族がいるなら帰らなくていいのかなーって思っただけだよ。」

まっ、余計なお世話だろうけど。

総司は軽くそう付け足した。

「……特に問題ない。それを言うならお前たちだってそうだろう。」

何の気なしにそう言ったが、想定外の返答を聞くことになる。

「ここにいる人たちは居場所がない人もいるから。脱藩したとかね。まあ近藤さんの人柄に惹かれて居ついちゃうなんて人もいるけどね。」

その返答に困った一は、お前はどうなんだとぶっきらぼうに言うしかなかった。

「僕?僕は居場所がない側の人間。家から体よく追い出されたようなもんだよ。父親が死んだのが赤ん坊の頃だったからどう頑張っても家督は継げないでしょ。仕方ないから姉が婿をもらって、僕は用なしの長男ってわけ。九つのときに試衛館に預けられてここまで育ててもらったの。」

何を隠そうとするわけでもなく、総司は淡々とそう答えた。

「あ、でも勘違いしないでよ?」

一が何も言えずにいる手前、総司が先程までの流れを絶ち切る。

「…何がだ」

「別に家を恨んでるわけじゃないってこと。姉夫婦とは仲良くやってるし。ま、そういう気になってた時期はあったけど、近藤さんや真命にだいぶ助けられた。」

腐らなかったのは二人のお陰だね、と総司は子どもたちと遊んでいる真命を眺めながら遠い目をしている。

子どもより子どもっぽいあいつが、と思うと信じられない。一も真命の方に目を向けた。

その時、思わず目を見張った。

子どものうちのひとりが離れた場所にある岩にしがみついている。その回りは流れがやや早く、どうやら足が着いていない。

「あ…!一郎!!」

胡座をかいていた総司が立ち上がる。

一は川へ突っ込もうとしたが、視界の端に泳いでいる真命をとらえる。

流れに揺らぎながらも、どうにか一郎の元へこぎつけていた。

一は咄嗟に竹刀を掴んで川へ足を踏み入れた。進んでいくにつれて水が体にきつく纏わり付いてくる。

一郎を抱え戻ろうとしている真命に、竹刀の先を突き出す。

「おい!捕まれ!」

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