1-6

昼飯のあと稽古ともなると和気藹々とした雰囲気はがらりと変わり、おちゃらけている奴らも刀の切っ先のような鋭い眼となる。

「やぁっ!!」

「とぉーっ!」

撃剣稽古の傍ら、道場の端。一は塾頭の総司と真命に付いて初めてあの太い木刀を握ったのだった。

「じゃあ、素振りからね。僕のを見て。」

総司は木刀を構えると、しなやかにそれを振りかざした。

一は思わず息を呑んだ。あまりに動作がしなやかなのにも関わらず、力強さと張りがある。

一言で表現するのであれば、美しい。それである。

同時に、この男には敵わないのではないかと思ってしまう程の覇気がある。

「はい、今度は君の番。」

総司に促され我に返り、一も木刀を構えて振ってみる。

しかし、思ったよりも軸が安定しにくかった。竹刀の何倍もある重さのためだろうか、思ったように動かせない。

これが真剣の重みというものなのか。

「思ったより大変だろ?ちょっと驚いた?」

真命に問われ、一は素直に頷いた。

「…正しく扱うには時間がかかりそうだ。」

「竹刀に慣れてるなら、なおのことそう思うだろうな。」

この大福男にできて、自分にできないのは癪だ。

一は総司の姿を思い浮かべながら、木刀を振った。

「ちょっと握りが甘い。」

「腰が引けてるよー?」

真命と総司の容赦ない駄目出しをくらいながら、一は一心不乱に空を斬った。

日が暮れると、体が鉛のようになっていた。

「お疲れさん。」

道場の床に寝転んでいると、真命が濡れた手拭いを差し出してきた。

「どう?うちの稽古、結構きついでしょ。」

「……慣れれば大したことなかろう。」

「楽しかった?」

「……新鮮だった。」

真命はくすくすと可笑しそうに笑っている。何がそんなに可笑しいんだと思いながら、一は真命から手拭いをひったくる。

「ま、気が向いたら明日もおいでよ。」

そう言って、真命は玄関の方へ向かっていく。

家に帰るのか、どこかへ出かけるのか知らないが。

一はその手拭いで顔を拭いて、大の字のまま目蓋を閉じた。

翌日の朝、総司に水をかけられて飛び起きると誰かが布団をかけてくれたことに気がついた。

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