のっぴきならない恋愛成就請負人〜魔法学園の特待生の俺が除籍危機でも同級生の恋を叶えてコネ作りに努めていたら名家の清楚美少女に好かれましたが、ハニートラップ警戒だけは怠らない〜
第40話 糸口は見つからない【side:ローズ】
第40話 糸口は見つからない【side:ローズ】
「オレが今までしてきた仕打ち全てを詫びさせてくれ。本当に……申し訳ない」
アイジ先輩の声色は普段とは違い、やけに落ち着いた様子で下を向いて謝罪を言葉にしている。
今までの小馬鹿にした感じとは違って嘘がないようには聞こえるが、本心はどうだろう。それにセレス君の名前を聞いてから急に変わった気がする。
二人にどんな関係があるのか気になるので聞いてみようかな。
「あの、お二人って知り合いだったんでしょうか? どうしてそんなすぐに謝りだしたんですか……!」
「ここで死んでる奴のことは正直知らねえ。オレが知っているのはこいつの母親の方だ。八年前……まだガキだった頃、分家のマルティエル家によくお世話になっていた。セリカ・マルティエルにな」
「……セリカ様に何があったんでしょうか?」
……どういうこと? ナイラさんは何かに気付いたみたいですけど、私にはさっぱり。
しかし、そこからアイジ先輩の過去について語られることになった。
「オレ達はあの日、《例の事件》に遭遇した」
「もしかして、エル・マーダーのことですかっ!?」
私は思わず大きな声を上げる。
それもそうだ、八年前に起こったあの悲惨な事件を知らない人は存在しない。
まさか、それにアイジ先輩が関わっていたなんて……!
「あの日は……今でも忘れられない。オレとセリカ様の二人で従者達を皆殺しにした殺人鬼から屋敷内を隠れ逃げ惑った。だが、それも数分に満たなかった。セリカ様は最期にオレを庇って殺された……ッ!」
「もし、その犯人がセレス君を殺したとしたら……アイジ・エルロード。あなたならどうしますか?」
「こんな思いをするくらいなら、オレが連鎖を終わらせる。……ああ、そうか。オレも……同じか……」
そう言ってアイジ先輩はまた下を向いた。ようやく先輩も気付けたんだ……自分の過ちを。
まだ周りの視線が鋭いままだけど、私は手を彼に差し伸べる。
「目的は私と同じです! だから! これから皆に謝り続けることを条件に犯人を見つけましょう!」
「……ああ。きっと許して守らないだろうが……そうする。本当にすまなかった」
「これから決して逃げてはいけませんよ、アイジ・エルロード」
ナイラさんの言葉が私達の耳に刺さると同時に、閉じられていた教室の扉が開かれた。
「ちょっと……ネク達はどうしたの……?」
息を切らしたマゼル先生が私に向かって驚きの声を投げかけてくる。恐らく膝を付いているアイジ先輩には気づいていない様子だ。
「……おかしくなっちゃったので、別の教室で眠ってもらってます!」
「えぇ……? でも前みたいに嘘ついてないようね……?」
「は? お前ら何してんだよ……」
「ってどうして貴方が一年教室にいるのよ。誰に用があるのかしら」
「……実は、アイジ先輩についてなんですが──!」
そこで、私はこれまで話した内容全てをナイラさんとアイジ先輩に訂正されながらマゼル先生に伝える。
初めは唖然とした様子で聞いていたマゼル先生だったが、いつもより真剣な眼差しのアイジ先輩を見て次第に全てを受け入れた表情を私達に見せた。
「なるほど……ね。それなら先生から言うことはないわ。ただ、私も深く協力は出来ないわ。理事長室の問題もあるし、学年ごとの対立は生徒間である程度歩み寄らないと解決しないからよ」
「……大丈夫です。オレが二、三年に説明してくる。オレ以外じゃ会話にすらならねえだろうからな。邪魔したな、オレはもう戻るぜ」
「……エルロード。私からの忠告を聞きなさい」
私達に背を向けて教室の入り口に手を置いて出ていこうとするアイジ先輩をマゼル先生が止める。
振り返った先輩に向けて、先生は厳しい一言を浴びせた。
「振る舞いを変えても人の中身は変わらない。他人からはそう見えてる……覚悟しなさいよ」
「……分かってるぜ、マゼル先生」
特に反論もないままアイジ先輩は教室から出て行く。彼の背中にあった覇気は既に抜け落ち、私の目では普通の生徒しか映らない。
「ところで、ベルセリア? ネクのことについても説明しなさい?」
「あ──」
***
「──こうでもしないとネクさんは気付いてくれませんし、皆が納得してませんから!」
「元から変な所はあったが……なら仕方ないのか。ただ……一応担任に言ってもらわないと困るわ。二階の空き教室ね? 今から行って説教をしてくるわ」
「あはは……お願いします!」
何とか一通りの説明は終わった……疲れた。
マゼル先生もロウタス君達に事情を説明するため教室から離れていった。残された私とナイラさん、そして他のクラスメイトの皆とお互いに目を合わせる。
「理事長室って結局開いてないんですね!」
「バラン理事長も見つからないままじゃここから出ることも難しいのに……閉じ込められてもう三日目よ? 何だか凄く不安になるわ……」
想像はしたくない。だけど、最悪の場合は勿論想定している。
「大丈夫だよ……きっと……」
皆の不安げな声色に乗せて、さらにどんよりとした空気が蔓延し始める。
全員が何となく察しているが、決して口にすることはない。
本音も漏らせない状況のまま、私達は夜を迎えた。
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