第24話 迷走する催眠少年
「……いきなりどうしたの? ラグちゃんがそんな神妙な面持ちになるの珍しいね」
「ま、まあ俺がデュラをこうやって呼び出すのは珍しいかもな! あはは……」
普段は見せない焦燥の表情をソプラ先輩に見せつけながら、ラグナ先輩は思いの告白の準備をする。
それを俺達は物陰から隠れながら呆然と眺めていた。
「中庭に呼び出すなんて……絶対告白だって気付いてますよね! 絶対!」
「ローズさん声が大きいよぉ……」
「しーっ! リリエ達はただ大人しく見守るのよ……!」
「大丈夫かな、ラグナ先輩」
大きな噴水の前で二人だけの空間を築き、訪れる沈黙の時間。痺れを切らしたソプラ先輩の方から口を開いた。
「良い天気だねー……平穏、普通の日なのに全く違う印象を感じられるよねー」
「……デュラ。これは今話さないといけないと思ってここに呼んだんだ。心して聞いてくれよ」
「ラグちゃん……」
二人の緊張感がこちらにも伝わってきて、思わず隅で固唾をのむ俺達。そんな俺達を差し置いて二人は会話を続ける。
「ほら、前に自分で言ってたこと覚えてる? あの……好きな人の話してたじゃん」
「……うん」
何だかいい雰囲気になってきた。俺らが何かせずとも二人は自然にくっついていたんじゃないか?
まあ……告白が成功したら俺の実績にもなるから万々歳だな。
「……思ったけど、中庭で告白って勇気いるわね。リリエもちょっと……憧れる」
「やっぱり先生がほぼ全員いないからですかね〜? マゼル先生以外もバタバタしてましたもんね〜」
「魔法使い放題だけど……いらないか。あの様子じゃ」
俺はそっと構えていた両手を下ろし、ただただ二人の会話を見守る。他の皆なんか最早小声で談笑まで始めていた。
心なしか、ずっと無言のハイノまでも嬉しそうな表情をしているように見えてくる。
「ようやく気が付いたんだよ、デュラが言う相手が誰なのか」
「誰だと思う?」
ソプラ先輩は意味ありげに優しくラグナ先輩に微笑んだ。やがて、ラグナ先輩が彼女の目を見ながら思いを告白する。
「自惚れすぎって思われても仕方ないけどさ……俺ならデュラの想う人になれると思うんだ」
「……なにそれ」
「いや、やっぱり……はは、そんなわけないか!」
「……ぷっ。あはははっ!」
「そこまで笑わなくたっていいじゃん……」
「ふふふっ。そういう所が……好きなんだよ」
そう言ってソプラ先輩は優しくラグナ先輩に抱き着いた。顔を赤く染めるラグナ先輩を、俺は呆然と眺める事しか出来ない。
だからこそ、少しずつ自らの心拍が収まっていくことに違和感も覚えなかった。
「……見飽きちゃったのかなあ」
「あれ? ネクさん、どうしました? 体調でも悪くなりました?」
そんな俺を心配してくれたのか、横からローズが心配そうに声をかけてくれた。いつも周りを見ている彼女らしい気遣いだが、今は逆に俺を苦しめる。
「いつになく浮かない様子ね。いつもみたいに気味悪くニヤニヤとかしないのね」
「リリエさんっ……気味悪いは余計だと思うよぉ……?」
「何というか、俺って駄目なんだろうな。普通だと思い込んでたけど、ここまで酷いとはね……」
「……あ! 二人がハグしてます! ネクさんネクさん見てくださいよ!」
ローズがふと暗い感情に浸っている俺を励まそうと、俺の袖を引っ張りながら先輩達を指差した。
たしかに、ローズが言うように二人は幸せそうな表情で結ばれている。
告白の手伝いをするだけで恩を売れると少し前までの俺は思っていたけれど、最近は少し違う。
これだけじゃ足りない。もっと俺にも出来る事があるはずなんじゃないかと。
「皆が居なかったら今頃俺は……」
***
俺達を照らす日差しが和らぐ。何もかもが終わり、先程までの感情が一切無くなった噴水前。
お礼を直接ラグナ先輩から渡され暇になった俺は一人、噴水の淵に座りぼんやりと青空を眺めていた。
「入学前より魔力は強くなったし使える魔法の種類だって増えた。コネ……人との繋がりも以前と比べて遥かにあるけど……」
「まだ……悩んでいたんですね」
「…………」
俺に声を掛けてきたのは、先程解散してどこかに消えていたはずのローズと、彼女の背後でじっと立ち尽くしているハイノだった。
「……もう放課後? それとも誰かが俺に相談しに来たの?」
「時間的に放課後にはなりましたけど……今日はもう誰も来ませんね。皆さん昨日の今日ですっごく疲れてるみたいですから」
「俺もちょっとだけ疲れてるのかもね。ごめんね、ローズ。今日は部室に帰って早めに寝るから……少しだけ一人になりたいんだ」
「じゃ、じゃあハイノさんは私の寮に泊まってもらいますね! また明日! 絶対に会いましょう!」
そう言ってローズはハイノを連れて急ぎ足で俺の前から立ち去った。
俺も強く当たりすぎたかもしれない。頭を冷やす意味でも早急に帰るべきだな。足早に俺も中庭から自室へ戻って行った。
部室の扉を開け、奥の敷布団の上に飛び込む。今考えてもマトモな考えは浮かばないだろう。無意識のまま横になっていると、落ちるように俺は眠りついていた。
日が更に沈み夕日に変わった頃、微かに廊下で響く雑談する声で俺は目を覚ました。
「……まだ誰かいるのか?」
俺は小言を呟きながら壁時計に目をやる。
時刻は現在十八時過ぎ、通常の就学時間はとっくに過ぎているから残った生徒は本来既に帰宅しているはずだが、学園の末端までやって来る理由は何だ。
次第に大きくなってく声に俺が誰の声なのか気が付いたのは、この部屋の扉を開けられた時だった。
「あら、寝起きなのね。ネク・コネクター」
「ナイラさんか……ごめん。今日の活動は終わったんだ。また明日ってことで――」
「何言ってんの? まだまだこれからでしょ? 今日は誰も私達を止める大人はいないのよッ!?」
「リリエまで……!? って、ローズも帰ったんじゃないの?」
ぞろぞろと入ってくるクラスメイト達は俺の制止する声を聞かずに部屋を埋め尽くす。
ローズによって勝手に扉を閉められ怯えている俺に向かって、先陣を切ったナイラがここに来た目的を告げる。
「こういう時にやる事一つだって私は習ったわよ? ほら、あれよ。お泊り
「お泊り会……!?」
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