最推し
「プレゼントなんていらない」
クリスマス前夜、6年生になった娘が言う。
何でもなすがまま、なされるがままの彼女から出た思いもよらない言葉。
「本当に欲しいものは自分の力で手に入れるから」
母親の私はその成長に驚くとともに、嬉しさと寂しさの両方を覚えた。
「見て! すごい、サンタさん需要わかってる!」
それでも翌朝、プレゼントのアイドル衣装を身にまとい大喜びしていたあなたが懐かしい。
いくら大人びていようとも、私にとっては可愛い我が子に変わりはない。
『それじゃあ1曲目、いっくよー!』
見慣れたはずだが見慣れない、美しい女性が画面の向こうに舞う。
大人になり、本当に欲しいものを手に入れた今でも、あなたは私の可愛い我が子。
『私を最推ししてくれる大好きなあなたへ』
前奏が鳴り、彼女は右へ左へと軽快に身体を動かして、全力で愛を表現している。
私は画面越しに声援を送る。
テレビモニターの右下にある、『大好きなファン第一号へ』というサイン色紙を視界の端に置きながら。
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