高精度
使い始めた匿名のチャットアプリ。
相性のいい人とマッチングするらしい。
『会社にムカつく奴が居るんです』
マッチングした相手にメッセを送る。
――すぐに返信がきた。
『いますよね、そういう人』
私への同意。
彼にもそういう人がいるのだろうか?
更に返信をするべく、
テキストを打ち込んで送信すると。
『でも、憎めない人なんです!笑』
『だけど、憎めないんですよね~』
と、ほぼ同じタイミングで、同じ内容のメッセが相手から届いた。
それからもいくらかやり取りを交わした。
その人のちょっとした仕草が気になるとか。
いつもツンとしてるのに、なぜか困ったときは助けてくれるとか。
さりげなく気をつかってくれるとこが好きだとか。
『なんだか気が合いますね』
『もし良ければお会いしません?』
完全に意気投合した私たちは、リアルで会うことに。
*
待ち合わせ場所の喫茶店前で相手を待つこと数分。
ぴこん、とスマホの通知が鳴った。
『ごめんなさい、少し遅れます。先に入って涼んでいてください』
『お気遣いありがとうございます。奥の席で待っています』
返信し、しばし店内で一人の時間を過ごす。
どんな人だろう?
きっと良い相談相手になってくれるだろう。
同じような人が気になっているのだから。
それからすぐ、カラン、と玄関のベルが鳴る。
ベージュの帽子を被っていると事前に聞いていたので、相手だと一目で分かった。
彼はスマホを見ており、ここからはその顔が良く見えない。
こつこつと、ゆったりとした歩幅で歩いてくる。
なんだか似たような歩き方の人を、いつも目で追っているような……?
「お待たせしました」
彼が帽子を取ると、見慣れた顔がそこにあった。
「「えっ……」」
そして今、私とマッチング相手は、お互いの憎めない相手と対面している。
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