二十一 「変な遊び」 無記名

 私が中学生の時の話。オチはないからあんまり怖くないかも。


 学校の帰りと自宅マンションの間に、周辺の子供たちが集まる公園があった。

 住宅地の中の公園だからあまり大きくはないし、遊具も少ない。ブランコ、滑り台、ベンチ、いくらかの木々。中高生は待ち合わせに使っているくらいで、ほとんど未就学児と小学生の遊び場になっていた。


 いつくらいだったか。急に未就学児の子供たちの中で変な遊びが流行っていた。未就学児といってもほとんど幼稚園の年長さんくらいの子で、たまに小学校低学年の子も混ざっていた。

 初めは何の気なしに遠くから眺めているだけだった。


 子供達が輪を作って、歌いながらくるくると円を描く。

 突然、誰かが歌うのを止めると、それに釣られて次々と歌を歌うのを止める。最後まで歌い続けていた子は、歌を歌いながら輪の中に入っていく。

 輪の中に入った子は目を瞑りながら、棒立ちしてゆらゆらと揺れる。

 周囲の子たちはこれまでの動きをピタッとやめ、真顔で中心にいる子を睨みながら、手を合わせる。

 中心にいた子は、目を瞑りながら、ふらふらと歩き出し、輪の中から一人を中心に連れていく。目を瞑っているから、おそらく無作為に選んでいる。

 中心に連れて行かれた子は、中心で正座をして、体を前後にゆらゆらと揺らす。

 連れて行った子は、その子の前で手を合わせる。

 周囲の子たちは、今度は手を繋ぎ、また歌を歌いながらくるくると円を描く。


 しばらくすると、まるで何事もなかったかのように解散して、各々が遊び始める。

 数回見ているうちに、なんだか少し怖くなってきた。何かわからないけど、宗教的な儀式にも見えるその動きや歌。歌の内容は、舌ったらずな子供の声と、声量、屋外という条件もあったため、あまり聞き取れなかったが、そのふしはわらべうたを思わせる、明らかに最近の唄ではないもので、それが一層不気味だった。


 ある時、その遊びの中に、友人の妹が混ざっていた。その姉でもある友人と一緒にその様子を見ていたが、友人が怪訝そうな顔をして眺めている。

 あれ、なにやってんの?と私の耳元で友人が呟く。


「私は知らない。むしろ、███の方が知ってるんじゃないの?妹から何も聞いてない?」


 友人に尋ねるが、そもそも友人は妹を連れてこの公園に来るのが初めてで、なぜあの遊びを知っているかもわからないようだった。


「保育園とかでもやってるのかな。とりあえずもう少しで終わるから、戻ってきたら聞いてみようよ。」


 そういって、心配をしつつも二人でその光景を眺めていた。


 友人の妹が、中心で正座をして、体を前後にゆらゆらと揺らす。

 連れて行った子は、その前で手を合わせる。

 周囲の子たちは、今度は手を繋ぎ、また歌を歌いながらくるくると円を描く。


 戻ってきた妹に友人が聞いてみる。

「ねえ、さっきの遊び、なんて遊びなの?保育園で教えてもらったの?」


「なまえはしらない!あそこにいるおねーさんがおしえてくれたんだって!」


 友人の妹が指差した先は、裏手にある山。


「お姉さんが住んでるの?あの山のところに?」


「うん、かった人は遊びにおいでって!」


 あんなところに家なんてあっただろうか、と思い友人とネットで地図を見ると、山にあるのは墓地と神社。


 怖くなった私たちはすぐに親に相談。町内会で議題になり、その遊びをしないことが子供たちに厳命された。

 以来、子供達がその遊びをすることは無くなったけど、結局はあれはなんだったんだろう。

 親に聞いてみたけどはぐらかされた。


 ただ、ひとつ気がかりなことがある。

 友人の妹曰く、それからも「おねえさんはたまにあそんでくれた」らしい。

 何度か町内会の人が交代で見張りをしてたけど、そんな女性は見つからなかったとのこと。

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