十八 「不気味な絵本」 文芸部の友人
これは、私がある日、学校の図書室で偶然見つけた古ぼけた絵本の話です。
その日は放課後に、課題の資料を探しに図書室に行ったんです。全然課題の本が見つからなくって、しばらく図書室をうろうろしていました。
諦めかけていた時に、奥の方の本棚の隅に古い絵本があるのを見つけました。高校の図書室に絵本なんてあったっけ、って不思議に思いました。
タイトルは「あしたしあわせ」。表紙には笑顔の女の子が描かれていました。小学校高学年くらいの女の子です。裏表紙は無地で煤けていて、貸し出しカードを確認するために、最後のページをめくると、ちゃんと古い貸し出しカードが挟まっていて、誰もこれまでに借りたことがないようでした。一応、この高校の持ち物だったみたいです。
読み始めると、なんだか変な感じがしました。ページをめくるたびに、その世界に吸い込まれるような感覚。女の子の日常が、日記のように書かれている絵本でした。彼女は明るく元気な子で、友達も多く、とても幸せそうでした。
急に、悲しい展開になりました。女の子が事故に遭って、両足を失ってしまうんです。そこからのページは、彼女を励ます親族や友人の姿が描かれていましたが、女の子は立ち直ることができません。
日記のように書かれていく物語。落ち込む女のことが、ある日何か気がついたようにひと言、書き記していました。
「みんなからもらおう」
次のページは真っ黒になっていて、気味が悪かったのですが、恐る恐る最後のページをめくりました。
女の子が、床に広がった赤い水たまりの中で、楽しそうに、たくさんのちぎれた足を数えているんです。
嫌な気持ちで絵本を読み終わり、閉じました。
その裏表紙を見た瞬間、私は凍りつきました。
裏表紙になかったはずの、女の子の不気味な笑顔が、そこには描かれていたんです。
その日はもう、絵本を投げ出して急いで家に帰りました。後日、図書委員の友人にその絵本のことを調べてもらったんですけど、図書室にそんな本は入荷しておらず、インターネットで調べても、そんな絵本は存在していないってことでした。絵本のあった本棚を探しましたが、いくら探しても見つかりませんでした。
今でも、あの絵本のことを思い出すと、気持ち悪くて鳥肌が立ちます。でも、この話を誰かに聞いてもらえたら、少しは気持ちが楽になるかなって思って投稿しました。
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