十四 「姉の声」 妹
私にはひとつ上の姉がいます。
姉が中学校を卒業してしばらくするまでは一緒の部屋で寝ていました。
寝る時には、姉といろんな話をして、どちらかが先に寝落ちしたらもう一方も寝る、ということが習慣になっていました。大抵、妹の私が先に寝てしまうことが大半だったのですが。
一度だけすごく怖い思いをして、その時の会話を鮮明に覚えています。
「お姉ちゃん、明日でかけるの?」
「うん、ちょっと部活で使うもの買いたいから、スポーツショップに行きたいんだよね。」
「いいな、私も連れてって。」
「いいよ。一緒に行っても、買うものないからつまんないと思うけど。」
「いいの。外歩きたいだけだから。」
そんな感じで、翌日の休みの予定を話していた時のことです。
しばらく何を買うのかとか、部活の話とかを聞いていたら、ちょっとずつ、姉の返事が遅くなってきて、眠たくなってきたのかなと思いました。私はいつも仰向けに寝ているので、姉の顔は見えていませんでした。
そして、10秒ほど姉の返事がなくなりました。
「お姉ちゃん、寝たの?」
「寝てないよ。」
「なんだ、全然返事がないから寝たのかと思った。」
「そんなことないよ。」
「無理しなくていいよ。そろそろ、私も眠るね。」
「どうして、こっち見てくれないの?」
「え?急にどうしたの?いつもと同じでしょ?」
そうして、首だけ姉の方を向きました。
姉は、目を瞑っています。
「あれ?お姉ちゃん寝てる?」
「どうして、こっち見てくれないの?」
途端に、今まで姉の声と会話していたのに、知らない女性の声になっていました。
姉の口も動いておらず、すーすーと寝息を立てて寝ています。
途中から会話していたのは、姉じゃなかった?
「こっちだよ。」
声は、姉の枕の上の方からでした。
怖いのに、目が閉じられません。閉じようとしても、目が閉じないのです。
誰か、いる。
「こっちだよ。」
私の呼吸が荒くなっていきます。
こんな体験、初めてでした。いつも通りの寝室、いつも通りの日常、いつもとなにも変わりないのに、どうして急にこんなことに?頭の中でいろんなことを考えました。夢なら覚めて欲しい。
「こっちだよ。」
勝手に目だけが、声のする方に動いていきました。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
「こっちだよ。」
そして、目が合いました。
そこには、私の知らない、女の人がいました。
女の人は、私を見てニタニタと口を横に開いて嬉しそうにしていました。目は、異様にギョロッとしていて、人間じゃないみたいでした。
「やっと、見てくれた。」
そこで、私の意識が飛びました。
朝起きて、その日の夜にあったことをお姉ちゃんに話したのですが、夢だったんじゃないかと、言われてしまいました。
私も、そう思うことにしました。
この家に、そんな女性の霊が出るなんて、今までになかったし、そんな曰くもありません。
それ以来、その女性は私の家には現れていません。
多分、夢だったんだと思います。
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