一 「石膏像」 匿名
私は美術部員です。
4階にある美術室。みなさんも授業で使用したことはあると思いますが、美術準備室に入ったことがある方は少数かもしれません。
準備室には、普段使わない教材や資料、卒業生の作品のほかに、奥の壁の棚にデッサンに使用する肩から上の石膏像が並べられています。
その数は6体なのですが、1つの石膏像だけ常に布が掛けられています。
美術の先生に話を聞くと、石膏像を落として破損してしまい、処分するまでの間、触ると危ないので布を掛けている、とのことでした。
ある日の部活の後、準備室で1人片付けをしていた時のことです。
ぽすっ、という音が背後から聞こえました。準備室のドアは私の左斜め前で、誰かが入ってきたわけではないことは確かです。
恐らく、後ろの棚に並んだ彫刻にかけられていた布が落ちたのだろう。
そう思い、布をかけ直そうと後ろを振り向きました。
欠けていたはずの石膏像の顔は、恐怖に顔を歪めた私でした。
声にならない悲鳴を上げ、走って逃げました。
次の日、その話を美術部の友人にして、勇気を出して2人で確認に行きました。
石膏像には布がしっかりと掛けられています。誰が掛け直したのか、わかりません。
勇気を出して、その布を取ります。
そこには、落下した時の衝撃で割れたのでしょう、顔面が空洞になった石膏像がありました。
今も、その石膏像は、なぜか処分されずに美術準備室に置かれたままです。
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