第5話 【調査報告46~異様な空気~】
ついに、長きにわたったこの調査報告もこれで最後となる。私はこの遺跡の魅力に憑りつかれていた。どんなに狭くとも、私は踏ん張って耐え、どんなに暗くとも、私は諦めることなく遺跡を探検した。その度にこの遺跡は私を驚かせてくれるのである。そして、最後に私は最大級の驚きを体験することになるのだった。狭い道を抜け、とびきり広い空間が私の前に現れた。その広さは、大人が立つことの出来るどころの話ではなく、ピラミッドでさえ納まりそうな程だった。これは決して大袈裟な表現ではなく、確かにそれぐらいの広さがあった。そこで、私は思わず尻餅をついてしまった。決して疲れたからでも、躓いたわけでもなかった。そこに立つ巨人の石像に驚いたからだった。それも一体ではなく、三体もの石像が横に並んでいた。この石像群が今まで見た“巨人の爪痕”や“焦げたダイヤモンド”などの跡をつけた主なのだろうか。見れば見るほどいるはずがないと思いが溢れてくる石像群の前で、私は一夜を過ごした。夢よりも不思議な石像群の事を考え、朝を迎えた。その時、朝の陽ざしで空気の異様な色の淀みを見た。私は確かめるため、起き上がりその空気の方に近づいた。その時、人が奥の穴に入るのが見えた。もしかして行方不明の探検家かもしれない。私は急いで後を追った。その穴の中は階段になっていた。私は階段を駆け上がった。私の足音の他に階段を駆け上がる音が響いていた。間違いなく誰かがいる。私は最上階に着いた。そこにいた人が巨人像に飛び移った。咄嗟に私は手を伸ばした。すると、私は足を踏み外し、転落してしまった。その時起きたことが最大級の体験であるのだが、私が転落し、死を覚悟したとき、巨人の石像が光り輝き、私に手を差し伸べたように見えた。確証がないため現実か夢かはっきりしないが、私ともう一人の男は無事だった。この時、異様な空気は収まっていた。因みに、この男は私の予想通り行方不明の探検家だった。彼は、この遺跡に来たとき、そこら中にあるダイヤモンドを独り占めにするため、同行する探検家を驚かして追い返した。但し、彼は怪我を負い、帰れなくなって怪我が治るまで休んでいた。その時、私が来たことに気づいた彼は慌てて逃げたのだった。逃げてまた怪我を負えば元も子もないと思うのだが。彼は帰った後、命拾いした事に感謝し、私と同行した探検家に均等にダイヤモンドを分けてくれたのだった。
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