#16 あなたを消せば良いんですよね?

「くっ! ハンマー・プライサー!」


 ビバリーヒルズがハンマーで応戦してくる。相手はハンマー使い、一撃の破壊力は凄まじいが、攻撃速度が比較的遅い。それはロコとの戦闘で経験済みだ。


「はっ!」


 俺は攻撃を避ける。地面に転がり、受け身を取りながら身体を捻ってモップを振り回す。


 遊歩道の周辺が綺麗になっていく。モップ・ステップ・ジャンピングの攻撃による、追加効果によって、周辺の掃除も行われているのだ。ふふん、すごいだろう。


「あばよ、ビバリーヒルズ! これで、終わりにしてやる!」

「アナタ、まさか奥義を――」

「その通りだ! 俺はあまり戦闘描写を長引かせるタイプの、作家ではないのでね!」

「わけのわからないことを! 意味不明ですわ!」

「お前は八百屋に帰って、バナナの叩き売りでもしてやがれ!」

魂美人宴奥義コンビニエン・ストライク!』

「ズィーベン・エルフ――」

「おっほっほっ! 予想通りですわ!」

「何?」


 ビバリーヒルズは俺の奥義の射程内から抜け出すと、ハンマーを俺に向かって投げ飛ばしてくる。危ないじゃないか。読者が真似をしたら、誰が責任を取る?


「よっと」


 俺は簡単にハンマーを避けたが――後ろにロコがいることを失念していた。


「ロコ!」

「うるさいですね。わかっていますよ」


 ロコが飛んできたハンマーを掴み取る。人間の技術ではない。普通無理だろ、飛んできたハンマーを片手で受け止めるなんて。どうかしているぞ。


「あなたの頭程ではないのです」

「照れるなぁ」

「はっ? どこが!」


 ロコはそのままレジスタンス・レジスターにビバリーヒルズのハンマーをぶち込んで、引き出しを閉めた。そして、シンギュラー・ポイントカードを、スキャンする。


「特異点の力を変換できました。これで、私もハンマー・プライサーを使えます」

「くぅ~、良いね。俺はそういうご都合主義、嫌いじゃない」


 モップとハンマーを構える、俺とロコ。


「さて、新人研修の時間だ。ロコ、掃除のやり方は、わかるな?」

「あなたを消せば良いんですよね?」

「お前のスマホには最近流行りの消しゴムマジカル機能は搭載されていないぞ?」

「冗談です」

「ふっ、面白え女」


 ふと、空を見上げる。何だか雲行きが怪しくなってきた。雷雨の予報は無かったはずだが、天気の様子がおかしい。とっとと戦闘を終わらせて、室内へ入りたいものだな。


「あ、ジューイチさんはそのままでお願いします」

「何が?」

「そのままモップを空へ向けて、絶対に動かないでくださいね?」

「なんだか避雷針みたいだな」

「そうですよ」

「おいおい、マジでございま――あばばばばばばばばばっ!」


 直後、俺の身体が痺れ始める。んぅ~、ビリリアント!


「サトシの気持ちがわかったぜ」

「誰ですか、サトシって――あ、充電が終わりました」


 ロコのポイントカードが雷を吸収し終えたようだ。ああ、アレを使うつもりか。


 アレって、ドレだよ?


「ハンマーといえば雷ですよね?」

「ソーですか」

「つまんな」

「そのトール! の方が良かったか?」

「神話に謝れ」

「んで? 何をするつもりだよ?」

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