#3 なんか、その、大丈夫なのか?
埼玉県古座市。俺が住む街。この街には、妙な話があった。
それは、いわゆる秘密結社と呼ばれる組織が、日本で一番多い街であるという噂だ。
秘密結社という言葉に、俺は非常にロマンを感じるが、それは今、関係がない話。重要なのは、何故そんな話を、今俺が持ち出すことになったのか、ということだ。
『ジューイチ、世界征服に興味はないかい?』
昼休みのマドカの発言。それは、そのままの意味の言葉であった。
聞けば、俺が今朝行ったエミリーマート古座駅前店。あの店舗のスタッフたちも裏では秘密結社として活動しているらしく、まだ新設されたばかりで、規模が小さい結社ではあるものの、首領の強いカリスマ性に惹かれ、マドカもそこで働いているようだ。
そういうわけで、俺はマドカにそこでのアルバイトを勧められた。
ふむ。いろいろと指摘したい点がいくつも存在するなぁ。
「マドカはそんなところ入って何がしたいんだ? なんか、その、大丈夫なのか?」
というか、秘密結社なのに、全然存在を秘密にできていないじゃないか。
「マドカも何か考えがあって、俺をエミリーマートスタッフに勧誘したんだろうけど」
どうやら、エミリーマートがアルバイトスタッフを募集している話は本当らしい。
マドカ曰く、俺は執筆ばかりで現実を見ていないらしく、逃げているだけのようなので、こうしてコンビニバイトでもして、社会参加しようという結論に至ったわけだ。
アルバイトだからといって、気は抜けない。真面目に取り組まなければならない。
「それに、バイトの経験が新しいアイデアのきっかけになるかもしれないし」
その秘密結社とやらが、何を企んでいるのかは定かではないが、コンビニとして営業できている以上、悪事には手を染めていないのだろう。事件性のある話も、聞いたことがないので、俺は心底安心してその話を承諾した。
人生は学べることが溢れている、それは紛れもない事実なのだから。
「まあ初日はマドカも一緒だし、何とかなるだろう」
俺は放課後のバイトに向けて、心の準備を進めることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます