いつかの罪

「これは……これは……やばいですね……ッッ!!」

「あぁ、会心の出来だぁ」


 有馬ブラザーズが去った後も築城を続けようやっと最強無敵暁丸が完成した。

 その出来栄えは知らん人らがスマホで写真を撮るぐらい素晴らしい出来だ。


「さ、佐藤さん! 写真撮ってもらって良いですか!?」

「おう。その代わり、俺もその後で頼むよ」

「はい!」


 城の横に立ってピースサインをする光くんをパシャリ。撮影した画像を光くんのスマホに送る。

 入れ替わりで俺も写真を撮ってもらい、その後は城単体をパシャりまくった。

 ひとしきり撮影したところで梨華ちゃんたちが海から帰還した。


「うっわ……何これすっご……」

「お兄ちゃんたち、見かけないなと思ったらこんなの作ってたんだ……」

「どんだけ本気でやってたの……?」

「素晴らしいサンドアートですね」


 呆れ混じりの賞賛を受けつつ時計を見ればもう良い時間だ。

 写真撮ってる時に気づけよって話だが撮影に夢中で時計とか全然見えてなかったぜ。

 そろそろ昼にしようと子供らを連れて海の家へ向かった。

 それなりに混雑していたが何とか六人分の席を確保。各々、好きな注文をして一息吐く。


「藍ちゃん翠ちゃん、どうだい? 楽しめてる?」

「「うん! 海さいっっこー!!」」

「そりゃ良かった。梨華ちゃんとサーナちゃんは?」

「めっちゃ楽しんでる! やっぱ夏は海だよ海」

「お陰様でとても充実した時間を過ごせています」


 よきよき。そう言ってくれると俺も有給取った甲斐があるってもんよ。


「それよりさオジサンと暁くんもお昼からは私らと一緒に泳ごうよ!」

「そうだな。砂遊びは堪能したし午後はそうすんべ」

「お兄ちゃん、競争しよ競争!」

「えー……? 浮き輪でぷかぷかしてる方が楽しいんだけど」

「お兄ちゃん枯れすぎぃ!」

「あ、注文が届いたみたいですよ」


 お、マジだ。


「はいよ、焼きそば六人前お待ち!!」


 勇者の方がデン! と大皿をテーブルに置いてくれた。

 分けて来るかと思ったが小皿に取り分けて食べる感じか。


「あんがと。ところで焼き鳥は?」

「それはもうちょい待ってろ」


 ちぇっ。ノンアルとは言えビールにゃ焼き鳥なんだがなぁ。

 まあ良い。とりあえず焼きそばで軽く腹を満たそうじゃないの。


「……美味しいですね。魚介の味がソースの風味と絡み合って何とも言えない調和を」

「あー、だめだめ。こんなんいくらでも食べられるやつじゃん」

「梨華おねーちゃん。こういうとこでカロリーとかそういうの考えるのはヤボだよ!」

「お前は何を偉そうに言ってんだ……ああでも、本当に美味しい……空きっ腹に染みる」


 他にも色々頼んでて注文した後で大丈夫かこれ? とか思ったが全然平気そうだな。

 やっぱシチュエーションってスパイスはすげえよ……無限に食べられる気さえしてくる。


「う~何かこう、すっごくカレーが食べたい……」

「おっと、翠ちゃん。我慢だぜ我慢。カレーは夜に作るんだからな」

「わかってるけどぉ」


 キャンプだからな。夜はカレーを作ることになっている。

 ちなみに明日の夜はバーベキューだ。


「ほら、オジサンの焼き鳥分けちゃるから……な?」

「はーい」


 とまあこんな具合で和やかに食事は進み食後。

 少しの食休みを挟んでからは今度は全員で海に繰り出した。

 海の家でやってたレンタルで水鉄砲を借り3対3で勝負することになったのだがめっちゃ楽しい。


「そこォ!!」

「ぎゃっ!?」


 銃口を向けた途端に梨華ちゃんが回避行動に出たが甘い甘い。

 回避する先に事前に攻撃を置いておくのが俺様よ。

 顔面に直撃を食らった梨華ちゃんが仰向けに倒れる。倒れて海に沈むと負けなので梨華ちゃんはここでリタイアだ。

 チームメイトをやられた光くんとサーナちゃんが俺に一斉攻撃を仕掛けるが……遅い遅い。


「ハッハァ! とろすぎて蠅が止まっちまうぜ~!?」

「あ、当たりません! 悉く回避されます!」

「クッソ! 大人げなさすぎるだろ!!」


 弾(水)をチャージする余裕さえあるからなこっちは。

 それはそうと……やっぱすげえな、サーナちゃん。


(……成人してたらポロリを誘発出来そうなとこを重点的に狙うんだがな)


 JC相手にそんなことやったら犯罪なので残念ながら禁じ手だ。


「ところで君ら、俺にばっか注目してて良いのかい?」

「「ハッ!?」」

「「いっただきー!!」」


 回り込んでいた双子ちゃんが一斉掃射。

 ハンデってことで二人はゴツイのを持たされてたから威力がすげえの何のって。

 堪らず離脱しようとしたサーナちゃんが足をもつれさせて海へバチャン。

 重点的に顔面を狙われ続け限界を迎えた光くんも耐えきれずにバチャン。


「いぇ~い! 俺らの勝ち~! はい、ターッチ!!」

「「ターッチ!!」」


 手を打ち合わせキャッキャと勝利を喜ぶ俺たち。

 そんな俺たちを梨華ちゃんたちは呆れたように見つめている。


「も、もうちょっと手心あっても良いんじゃない!?」

「ばっかおめー、遊びにも本気になれねえ奴が一体全体どこで本気になれるんだって話よ~」

「オジサン良いこと言った。藍ポイント1あげる!」

「翠ポイントも1あげる! 3ポイントたまったら肩揉んであげるね!」


 あらやだ可愛い。


「とは言えある程度拮抗しなきゃ面白くないのも事実だ。次はちょい……っとと」


 ちょっと飲み過ぎたか。催してきやがった。


「ごめん、ちょっとトイレ行ってくらぁ。預かっといて」

「あ、はい」


 光くんに水鉄砲を預けて海から上る。

 確かトイレはー……あっちだっけか。

 そそくさとトイレに向かうが……やはりと言うべきか、混んでた。

 こういうとこの便所って混みやすいよなぁ。男子も女子も列が出来てらぁ。

 大人しく列に並び順番を待つことに。こんなとこで超常の力を使うんもアホらしいしな。


(早く順番こねえか……おっ!?)


 ふと、少し離れた場所で腰に手を当て飲み物を飲んでる女性を発見。

 金髪ショートのギャルっぽい子でかなりスタイルが良い。


(ギャル……良いなぁ。最近はAVでもギャル系とは疎遠だったし余計に……)


 サーナちゃんのようなド級ではないが、それでも十分過ぎるムッチリ感。

 胸も尻もでっけえが、個人的にポイント高いのはちょっとだらしないお腹の肉……やべ、見てるのバレた!?

 ギャルと視線が合う。不快そうな顔をしていたが、直ぐに怪訝な表情に変わる。


(な、何だ……?)


 ペットボトルを片手につかつかとこちらに向かって来る。


「あんた……もしかして、佐藤?」

「は?」


 え、誰? 佐藤とか呼び捨てにするぐらいだし……いやでも見覚えはないな。

 誰かと勘違いして――――


「あたし……いや、俺だよ。“高橋”だ」

「ぇ」


 瞬間、俺の脳裏に蘇る青い春。

 倒れ伏したアイツが俺を見上げている。変わり果てたその姿……やったのは俺だ。

 あの頃のアイツがそのまま成長して髪を染めればこう、なるのか……?


「た、高橋……?」


 それはかつて俺が“殺めた”親友ともとの再会だった

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