第3話 約束もしてないのに。
『はい、おつかれ〜ッス!!』
『明日呼びに行くわ!』
『おぅまたなー!』
時間は夕刻……約束もしてないのに、タバコを吸いながら
その人が現れるのを待つ俺。
『タバコって何でこんなに美味いんかねぇ〜?はぁー。』
夕陽の西日がさす頃にその人は姿を現した…
自転車を重そうに引きつつも下を向いている。
が、、、オレに気が付くと、
ペコリと頭を下げて通り過ぎて行く…。
友村さんの頼りない後ろ姿を見ながらも俺は声をかける。
『あんた、もう辞めた方が良いよ!!』
振り向く友村さん。
その表情は複雑な感情を表していた。
『向いてねぇよ。辞めろ!』
タバコを消しながら俺は友村さんに近づくと、友村さんは
自転車を持つ手が止まったままだ。
肩が少しだけ震えてる……
『見ててイラつくんだよ!』
友村さんが自転車をまたぎ走り去ろうとした時、
ハンドルを持って強引に止めた。
俺を見つめる目が潤んでいる。
オレは……
『見てらんねーよ。』
友村さんは、1日で沢山あった苦しい出来事に涙が次々と溢れ出していた。
ここで気の利いた奴なら、さり気なく抱き寄せんだろうよ。
だけど……オレはそんな事しなかった。
重たい自転車はいつしか俺が引いていた。
友村さんの、今まであった出来事を、、俺はただ黙って
聞いていた。
《旦那さんが別れてもしつこく連絡入れてくること。》
《一人娘の子供が来年、中学へ上がること。》
そして……
《働く事が辛いこと》も……
俺はいつしか、友村さんと特別な仲に成りたいと心のどこかで期待を寄せていた。
話し終えてスッキリしたのか?
友村さんは笑顔で、
『ありがとう!佐々木君て頼りになるね!また話せると良いね!』
オレは少し照れた顔を見せられず下を向いた。
友村さんが帰ってしまう。
焦ったオレは…
『LINE…交換しねぇ?』
『え?』
2人の少しだけ離れた距離に、ふんわりとした、秋を思わせる風が吹いた。
同時に友村さんからシャンプーの良い香りがする。
『えっと、、、LINE??』
『ん。やなら良い。』
ぶっきらぼうな俺を微笑みながら見ていた友村さん。
そして……
俺達は『しんくん』と
『あき』と呼び合う仲になるまで
余り時間はかからなかった。
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