VSフォルティス・サクリフィスⅡ


 クソ野郎はその有り余る魔力に物を言わせて肉体を回復する。それで起こる事象はもはやエリクサーを飲むのとほとんど変わらない。


 奴だけが万全な状態になるのはこちらが不利になるだけ。だから数の少ないエリクサーを1本使用し奴の回復速度を上回り先を行く。


 宝物庫からエリクサーの入った小瓶を口の中に出し、その小瓶を噛み砕きながら奴へと突撃する。

 当然口の中が破片で血だらけになるが、それもエリクサーで再生だ。

 割ったらすぐに宝物庫へ破片を収納し、指輪から縁が刃の盾と手斧を取り出し、増やして水の腕に装備させる。トラトトを右手へ持ち換え、更に水の腕を2本増やして、その2本には弓を持たせた。


 全ての装備を終えた頃にはクソ野郎の目の前。そのままトラトトによる突きをクソ野郎の肉を貫くまで繰り返す。


 クソ野郎の再生はどうやら間に合わなかったらしい。まだ筋肉の筋が窺える手のまま短剣を握り俺の突きを時には受け止め、時には受け流し、時には踏み込んで俺の体を傷付けようとしてくる。


 懐に入られた時は腹から水の腕を出して、その腕に掴ませた。そしてそのまま水圧を上げてクソ野郎の手を潰そうとしたが、その前に魔力を纏われて強引に引き抜かれることで防がれる。


 助走の為か、少しクソ野郎が俺から離れれば、そこへ手斧による追撃と弓矢による追撃を行う。

 すると、手斧は水の腕を切断されることで一瞬制御を失くした時に奪われ、弓矢は普通に箆の部分を掴み取られて、そのまま短剣2本と手斧と矢を用いてハルバートに創り変えられた。


 道具は奴の手数を増やすと判断した俺は、盾と弓を宝物庫へと仕舞い、トラトトと水の腕の徒手空拳で攻撃する。


 が、



 「テ、メー!また猿真似か!!」


 「良い物は真似しないとね!」



 クソ野郎もクソ野郎で火の腕を4本出し、トラトトとハルバート、水の腕と火の腕による互いに防御を捨てた攻撃が始まる。


 俺が水の腕で振り下ろしを行えばクソ野郎の火の腕の打ち上げで防がれ、逆にクソ野郎が火の腕で俺を掴もうとしてくれば水の腕でその手首を掴んで圧力を上げて握り潰す。

 トラトトで突けばハルバートに引っ掛けられて大きく仰け反らされ、その隙に突きを放たれれば脇下を通らせて柄を挟み込みがら空きの胴へ蹴りを入れる。


 そんなことを体感1時間繰り返した俺達は、埒が明かないと互いに1度離れて、俺は水の蛇を、クソ野郎は火の鳥を魔法で産み出し、それぞれに戦わせ始める。


 そろそろだな。


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