実りの有る一ヶ月
サクラ共和国首都に存在する学園。名前はプラム学園と言い、首都の名前そのままを学園の名前にした歴史有る学園だ。
人界大陸1742年の夏終わりに俺ことサース・ハザードはこのプラム学園に編入した。
前の学園下等部卒業からプラム学園中等部の入学式まで約2ヶ月有る。その間に俺には天魔の魔王という友人というか協力者が出来た。なんの協力者かと言うと、俺には学生の間に達成したい目標が有る。その協力者になったのが天魔の魔王だった。
奴の目的は話が長くなるから詳しくは割愛するが、要するに俺の目標達成を間近で見たいというものだった。
彼との話し合いの結果、彼は俺の協力者になった。
彼と出会ってから入学式まで約3週間有ったため、俺は彼と出会うきっかけとなったギルドの依頼の達成を報告した後、彼と出会った旧オウカ宗教国首都に在る廃城へと毎日通った。
彼との時間は当時自分の強化が頭打ちになりつつあった俺にとってとても刺激的で為になるものだった。
具体例を挙げていこう。
まずは身体面や技術面。これは推測でしかないが、飛躍的に上昇した。
天魔の魔王独自の魔法属性である創造は使用する魔力に応じて作りたい物を創る属性らしく、これにより創られた物を彼は最初俺に3つ渡してきた。
1つは魔力強化の指輪。1つは魔力貯蓄の腕輪。1つは強化強制サポーターとかいうネックレスの3つだ。
指輪は、それにしても少ない俺の総魔力を抑制する為の効果だった。魔王曰く、魔力は消費されればされるほどゼロに近い状態にあればあるほど肉体が生きようと藻掻き魔力回復を促進させて通常より倍の量の魔力を産み出すらしい。これの積み重ねが総魔力の増加にも繋がるらしく、この仕組みを利用し常に俺のそうでなくとも少ない総魔力を1桁まで抑えて常に魔力を作らせ続けるそうだ。
要するに意図的に飢餓状態という極限状態を再現し、生命力を刺激して総魔力量の増加と回復速度の上昇を促す訳だ。
腕輪は名前の通り魔力を貯めておける腕輪らしい。
魔王曰く、俺がどれだけ足掻こうと俺の総魔力量はあのクソ野郎や魔王の足元にも及ばない程度にしか増えないらしい。その魔力量という圧倒的な差を少しでも埋めるために魔王が創ったのがこの腕輪だった。
似た道具の話ならいくつか聞いたことが有るが、それは大抵一般人50人分までが関の山。それ以上貯め込める余裕は無いのだそうだ。それに対してこの腕輪は貯蓄量無制限で魔力を永遠に貯め込める代物らしく、そしてここまでやってようやくあのクソ野郎の足元と言われた。だからこれは俺にとって必須の道具なのだと。
そしてサポーターとやらは、魔王曰く肉体の改造強化の為らしいかった。理屈は指輪の肉体版といった感じで、要するに意図的に体に制限と負荷を掛けて、その状態で生活させるというものだった。しかも負荷の強さは魔力によって調整可能というものだ。
こちらは、なんと言うか、魔王曰く今の俺に足りないのは技術面ではなく肉体のそもそもの強さだと言われた。
他を圧倒するような力が無い。攻撃や衝撃をいなす柔らかさが無い。速く駆けるための脚が無い。一瞬で動く瞬発力が無い。体力も魔力も尽きた後に動けるだけのスタミナが無い。戦闘時に好機を待つという忍耐力が無い。攻撃を防いだりいなしたり、逆に攻撃を仕掛けたりフェイントを挟んだり、そういうテクニックが無い。そして何より戦いを終わらせるための決め手が無い。
こんなことを淡々と語られた。
正確には俺の年齢や平均的な強さを思えば十分事足りてるらしいのだが、俺の目指す場所を思えば無いも同然らしかった。
流石にこの指摘を受けた時は頭に血が昇ったが、その後に魔王と行った組み手で具体的な指摘を受けながら良いところダメなところをちゃんと認識してみれば納得するものしかなかったため何も言えなかった。
このサポーターは、そんな俺の肉体面に於ける『足りない部分』を鍛えるためのサポーターらしい。
実際に着けてみればわかったが、ネックレス型のこれを首に通して身に着けてみたらその瞬間から体が全く動かなくなった。そして立つことも出来ず、そのまま倒れてしまった。
魔力を流してみれば少しだけ動けるようになったが、それも日常生活レベルの動きまでしか出来なかった。
魔王からの課題は、この3つを身に付け日々を今まで通り過ごすというものだった。
課題は熾烈を極めた。魔力はずっと放出し続けなければ途端に動けなくなったし、その魔力も恐らく数値にすれば1有るか無いか程度まで抑制されてただろうし、そんな状態で戦闘行為までやるのは地獄だった。
おかげで日を追う毎に自分が鍛えられて行くのがわかった。
停滞気味で頭打ちになっていた俺にとっては望外の成果だったと言えた。
そんな生活を約1ヶ月行った今日。俺はプラム学園中等部の入学式に参加していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます