第10話



「おはよ〜」


「おはようございます~」


同伴で店に出勤してきたアヤは、コートを脱ぐ為、更衣室へ入った。


そこには、みほも居て、着替えの最中だった。


「みほさんねぇさん、おはようございます」


「あら、アヤちゃん、おはよ〜、今日も同伴?」


「ハイ!」


アヤは明るく振る舞う…みほがぐりっちへしたキスの事は伏せたまま…。


「アヤちゃん、最近ぐりっち、何か変じゃない?」


「えぇ?いつもと変わらないですよ~」


「いや…何か違うのよねぇ…前から皆に…平等って言うの?…帰りに、皆で飯でも行くか?…なんて、最近、言わないし…飲んでる時は、変わらないのにな…なんか、違うような…」


「そうですか?本人に訊いてみたらどうですか?」


「そうだね…ってあたしね…この前ぐりっちにキスしちゃった…キスしても…キスぐらいじゃぐりっちは、あたしにはなびかない…」


「へぇ~」


「あたしね…アヤちゃんもぐりっち好きなの知ってるよ…でも、あたしも大好きなの…」


その時、案内の子がやって来て…


「アヤさん、同伴のサムさんが、遅いって呼んでますよ〜2番テーブルです。お願いします」


急いで化粧を直していると、みほがまた口を開く…。


「ぐりっちの人柄も好きよ…でも、ぐりっちはそれ以上に良いお客さん…ぐりっちをものにしたらあたしがまたトップに戻るしね…だから、あたしは本気出すわよ…」


「あはは…おねえさん、なら、勝負ですね?負けませんよ〜」


「ガチンコよ…でも、ぐりっちが誰を選んでも恨みっこ無しね」


「ハイ!!」


良かった…。


アヤは、みほの偽りのない宣言に、心のモヤモヤが軽くなった。


おねえさん…ホントに勝負よ…あたしはお店抜きでもぐりっちを奪ってみせるわ…。



「おまたせ〜」


「アヤちゃん、遅いよ…もう、アフターも付き合ってよ~」


笑顔で受け流し、アヤはぐりっちが来店するかと、入口の扉に目を向けた…。


「なんだよ~座っていきなり誰かを待ってるみたいに、扉を見るなよなぁー」


「ゴメンね。ちょっと音がしたから見ただけよ…だってサムちゃん、大好きよ」


アヤは、甘えて、しなだれかかる…。


「アハハ…ねぇ、ママ…1本入れちゃって…アヤ、ピンドンでいい?」


「うん、フルーツは?」


「いいよ~フルーツもね~」



しなだれながら、アヤはまた、扉の方へ目を向けた…。



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