第8話


なんで俺なんだ?


こんな俺のどこがいいんだ?



シャワーからあがると、アヤは小さなテーブルにつまみとビールを用意していた。


「ビールで良かった?ぐりっちの好きなバーボンもあるよ?」


「ビールでいいよ…」


「ごめんね…ちょっとひとりで飲んでいて…あたしもシャワーしてくるから…」


「うん、ゆっくり入ってこいよ」


グラスに1杯注いでおいてくれたビールをひと口飲み、俺はタバコに火をつける。


スマホを開き、明日の仕事の段取りを決める。


そうこうしている間にアヤがシャワーから出て来た。


化粧を落とし、髪を上げ、バスタオル1枚の姿で俺の前に腰掛ける。


「お前、服かパジャマ着ろよ」


「や!身体が熱いもん」


「じゃぁ、せめて、パンツぐらい穿けよな」


「色っぽいでしょ?」


アヤは無邪気に笑い、胸を開こうとバスタオルに手をかける。


「バカ、湯冷めして風邪引いたらどうするんだよ」


「ぐりっち、看病してよ。って言うか、あたしにもビール」


俺はアヤのグラスにビールを注ぐ…。


「今日はあたしがお客さんだね」


俺は、笑いながら、アヤが加えた俺のタバコに火を付けた。


「ぐりっち、タバコの火をつけるの、ヘタ〜…」


「そりゃ仕方ないだろ?いつもは着けてもらう方だからな」


アヤは笑顔を絶やさず、ずっと俺に話かける。


「良くもまぁ俺に話しかけ続けられるなぁ」


「伊達に1番背負ってないからね…ってウソウソ、ぐりっちにだとドンドン話しかけたくなるんだよ…ハックション…」


「バカだなあ…風邪ひくって…」


バスタオル姿のアヤを軽く抱き抱えると、布団へ入れとベッドにアヤを横たえる。


「今日も一緒に寝てくれる?」


「あぁ…添い寝ならしてやるよ」


アヤは安心した顔で布団に潜り込んだ。



俺のどこがいいんだ?

親娘ほど歳の離れた冴えない男の俺のどこがいいんだ?


なんで俺なんだ…?



「ぐりっち〜、早くこっちに来てよ〜」


しょうがねぇなとアヤのベッドに滑りこんだ…。

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