第2話


カウンターバーで、泣きながら酔ったアヤを、抱き抱えるようにして、アヤの部屋まで送り届け、そのまま帰るつもりでいた。


しかし、アヤに、まんまとハメられたのだ。


アヤは、俺の腕を握り言った。


「あははっ…ぐりっち、引っ掛かったぁ~。もう、帰らないって言うまで、この手、離さないんだから」


「お前、酔ったふりしてたのか?」


「違うよ!本当に酔って、本当に泣いたんだよ。だって、部屋まで送ってほしかったんだもん」


「やれやれ…騙したな…手を離しなよ。もう、大丈夫みたいだから、俺は帰るから…」


「嫌!なんで?せっかく、あたしの部屋まで来たのに、なんであたしに、そんなに冷たいの?あたしが嫌い?」


「嫌いじゃないよ。でも、アヤは、俺が飲みに行く店の女の子…。俺は自由に楽しく遊びたいから、店の娘とは、プライベートではつきあわない。店だけで楽しい会話と酒があればいい」


「そんな、いつものぐりっちの台詞、知ってるし、嫌いじゃない」


「嫌いじゃないなら、俺の台詞、わかってくれよ。しかし、アヤほど可愛くて、話上手なら、他に彼や男なんか、いくらでも作れるだろ?なんで、俺なんだよ。俺はアヤの親父と同じくらいの歳なんだぜ…」


「パパはもう、死んじゃったよ。生きてても、ぐりっちより歳上だよ。でも、歳なんか関係ないよ。それに…ぐりっちは…」


「え?俺がどうしたの?」


「いいの…とにかく、あたしはぐりっちしか好きになれないんだから…」


「バカだなぁ。俺は一応、既婚者だぜ。戸籍上は妻がいる。」


「知ってるよ。家庭内別居でしょ?ぐりっちの事は、なんでも知ってるよ」


「なら、キャバ嬢と客の関係でいいじゃんか」


「言ったでしょ!キャバ嬢だって、ひとりの女。惚れた男に触れていたいって…」


「バカだなぁ、俺はお前を幸せに出来ないぜ。いつまでも、俺は遊びのつもりだぜ」


「いいのよ…夢でいいの。あたしだって、夢がみたいもの…」



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