第2話

こっちにおいで。

ここに座って。

そんながっかりしないでよ。

今からたくさん楽しいお話をしよう。

素直に言うことを聞いていい子だね。

君は学生の頃はそんなに素直な子じゃなかったのにずいぶん大人になったもんだ。

しっかりお話してしっかり見えるように

縛るけど我慢するんだよ?

彼の前にあるテレビの電源を入れて

準備する。

僕が流し始めたのは彼の娘が橋の欄干らんかんから

突き落とされる映像だ。

繰り返し繰り返し永遠と流れている。

そして僕は遺体の写真を部屋の壁に貼り付け始めた。

「この写真をね、壁紙にしようと思うんだ。

たくさんあるから壁一面に貼って床にも貼っていこう」

彼は泣き始めた。

「そんなに悲しいかい?

生きてることが辛い?」

彼はうなずく。

「そうか、僕がいじめられていたときと同じ気持ちだ。

悲しくて生きているのが嫌だった。

気持ちわかるよ。

僕もそうだったから」


「悪かった…ごめん…ごめんなさい」


「もう遅いよ。

だって娘さんは死んじゃったんだから。

ほら、テレビを見てごらん。

この写真も見てごらんよ。

死んでるだろ?なあ、死んでるよな?」

僕は彼の目の前に写真を突きつけて

見せる。

嗚咽おえつをもらしながら泣く君を

冷たい目で見たあと、僕は写真を壁に貼る

作業に戻った。


それから毎日、壁や床にビッシリ貼られた

遺体の写真と永遠に流れている突き落とされる映像とともに彼に娘との思い出の話を喋らせ続けた。

携帯に保存されていた思い出の場所での話、動画を一緒に見ながら彼に娘との楽しい思い出の話をさせる。

そして時折 僕は娘が死んでしまったことを

話し、彼をどん底に叩きつけた。

それを毎日繰り返していたらついに彼は

気が狂ってしまった。

なあ、生きるのって辛いだろ?

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