第12話

いのりに脈を測られたときに、昔の子とを思い出した。


いのりは本当に人想いで、でも、自分に厳しすぎる性格だった。


下半身が動かなくなったのも、いのりが、車道から飛び出してきた女の子をかばって助けたからで、結果その女の子は助かったが、いのりは車に引かれ、首と脊髄の損傷で下半身不随になってしまったのだ。


当時17歳だった俺は、緊急搬送された赤十字病院に行き、ガラス越しにいのりを見たが、集中治療をされたあとだった。


俺は後悔した。


まだ、9歳のいのりをスラム街で自由にするべきではなかったと。


俺の管理不足が招いた結果だ。


「いのり、俺はお前が大好きなんだぞ」


そう思いながら、脈拍が上がるのを実感した。


検温と脈拍の測定が終わったあとは、晏子と他愛のない話をした。


昔あったデートでのアクシデント、親の話、子供の名前の話。いろいろだ。


晏子にも苦労を掛けている。いのりのお守りをしてもらったこともある。それ以外の日はだいたいいのりの親友のカノンちゃんの実家にお世話になってて、俺だけスラム街と仕事場を行き来していた。カノンちゃんは大切な人だ。


うーうん、みんな。みんな大事な人だと思う。


俺はベッドの上で少し力んだ。それを見てる晏子も感じたのだろう。俺ににっこりと笑って返した。

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