第4話

シブヤから大宮までの行き方をイグニスマップで検索しながら、FMキャサリンに耳を傾ける。


「このポーズはね、やっちゃいけないの。フランスだと侮辱のポーズなの。」


どのポーズなんだ?と俺は大事なところを聞き逃していたことに気がついた。


「こうするといいの、ピースね。ピースで挨拶。」


なるほど、今度マスターやおじいとおばあに試してみよう。


そんなことを思いながら大通りに出てシブヤ駅に足を向ける。


徒歩十分で駅に着き、そこから電車で4,50分。


そのままラジオを聞きながら、電車のドア付近に寄りかかった。ゆらゆらとスマホとにらめっこしながら時間が過ぎていく。


ふと妹のことを思い出す。


妹のいのりだ。


今は居候しているやまじいとくにばあに預けている。


妹は下半身不随のため、車いす生活を余儀なくされているが、幸い友達と言うか親友のかのんちゃんがいるので、いのりの世話全般を任せちゃってる状態である。


彼女に会うたびに俺は申し訳なさそうに4千円を渡すが、かのんちゃんはいつも2千円をキャッシュバックしてくるのだ。


優しいやつめ。


早くいい旦那見つけて結婚して幸せな家庭を築けよ、という顔でその2千円を受け取っていたことを思い出し、クスッと笑った。


そんなことを考えてるうちに東京駅に着いたため、埼京線に乗り換えることになった。


人ゴミ


自分は紛れてるのかな。


どうなんだろ。


仕事の関係上人ゴミに紛れないとやれない仕事なので、いつも【紛れる】ことに集中する。


スマホをいじるのも、周りの人達がスマホをいじっているのがわかっているからなので、好きでいじっているのではない。


やらなくていいことをやらなければならない。


人生というものはつくづく難しいものだ。


と思いつつ埼京線の電車に乗り込むのであった。

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