第3話

ブルートゥースイヤホンを左耳につけて、お気に入りのラジオを聞く。


FMキャサリン、東京でしか聞けないらしい。


路地を抜けると小通りがあり、左手の突き当たりには大通り、右手側の突き当たりには銀座商店街に通じている。


右手に持ったコーヒーミルクを口にしてスキップがてら、先ほどおじさん二人に言われたコーヒー店に向かう。


コーヒー店の前に着く。


名前は「喫茶マッシュルーム」


ドアを開けると、カランコロンカンと音が鳴り、店主の「いらっしゃいませ」の声が聞こえる。


店主の名前はマイケル・スミス。


俺がこの店に来るのは100?200?数え切れないほど通っている。


いわゆる常連ってやつだ。


とりあえず右端の席に着き、いつものミルクティーを店主にオーダーする。


ほんの2,30秒くらいで、いつもの甘々な温かいミルクティーが手に届く。


それを一口含み、飲み込むと、周りの背景と雰囲気と相まって、イギリスのロンドンにいる気分になる。


行ったことはないのだが、多分そうであろう。


まあ、いい気分ってことだ。


ミルクティーをもう一口含み飲み込んだ後に、2,30秒ほどぼーっとしているうちに、店主が口を開いた。


「修身君、頼みがあるんだ。大宮駅のバスに乗って、三橋1丁目にあるエイトってコンビニにいる[みどりさん]っていう店員にコーヒー豆を届けてほしいんだ。頼まれてくれるかい?」


そう言うと、コーヒー豆の袋が入った紙袋を手前に置き、その下に1万円が隠されていることに気がついた。


俺は、「YES、マスター」と言ってほほえみ、飲みかけのミルクティーを全部口に含んでゴクリと飲み込んだ。


マスターもほほえんで、ドアを開けたときに「いってらっしゃいませ」という声を聞きながら、外の世界へと戻っていった。

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