第2話

シブヤにひっそりと佇む家屋の裏路地におじさん2人と俺がいる。


1人のおじいは70過ぎのホームレスで、もう一人は定年過ぎて家にいるのが暇だから遊びに来ているようだ。


今やっているのは、賭け将棋。


俺と定年過ぎのおじいが100円を描けてバトルしているのだ。


将棋盤はホームレスのおっちゃんのものらしく、膝下ぐらいの空になった油カンの上に将棋盤を置いてやっている。


俺は幾分勝負事、特に何かを賭けた勝負にはめっぽう強いので、今回もおそらく、というよりもう相手が詰まっている状態なので、勝ちは決まりである。


しばらくすると、定年おじさんが両手を挙げて「参った」と100円を胸ポケットから取り出して俺に渡した。


およそ30分ほどの遊びだった。


俺は、持っていた飲みかけのコーヒーミルクのペットボトルを片手に立ち上がろうとすると、さっきまでずっと将棋盤をまじまじと見ていたホームレスのおっちゃんが、


「そーいえば、この路地から右に曲がって突き当たり付近のコーヒー屋さんがあるんじゃが、そこの店主が修身君に頼みたいことがあるそうじゃったよ。」


と、言った。


なんだろう、仕事の話かな。プライベートかな。そう考えてると定年過ぎのおじさんが「S(エス)」と口にした。俺はそれで仕事の話だと悟り、「100円ありがとねー。またよろしくねー。」と、その場を後にした。

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