第15話
「あ、これ美味しい」
少し落ち着いてから三人は小さなテーブルを囲みティータイムと洒落込んでいた。
随分と蒼樹の方も落ち着いたようで顔色も大分良くなった。
「ふふっ、これは『世界樹の葉』で作られた茶葉で肉体的にも精神的にも落ち着かせる効果があるの。まぁこれもここに来てから知ったモノなんだけどね」
そう微笑みながら輝夜は用意していたお菓子に手を付けていた。
「…………何か誰か生き返りそうな名前の茶葉の名前だな」
記憶が無くても人生で一度は聞いたことのある名前に洸太郎は謎の身震いを少しするも気にしない事にした。
これ以上深追いしてしまうと何か怒られてしまう気がしたのだ。
しばらくゆっくりとした時間が過ぎていく。
そして、そこからようやくまだ不明になっていた本題に入る事になった。
「さて輝夜、まだ聞きたい事があるんだ―――――蒼樹もいいよな?」
洸太郎の同意を求める声に蒼樹も頷いた。
「うん、わたしも―――――知りたい。今自分が置かれてる状況っていうのを。もう、逃げたくない」
その目は覚悟のようなモノを感じ取った。
そして、その覚悟に応えるために輝夜は今度こそ自分の知る限りの事を語り始めた。
「じゃあ続きなんだけど、さっき話した『世界樹の園』と『並行世界』、そして『大禍刻』の事は分かったかしら?」
分かった、とは正直言い難い。
一度休息を挟んだとは言え全てを理解出来たとは思わなかった。
その辺りは輝夜も何となく空気で伝わっているのか深く触れなかった。
「まぁこの辺りは追々にでも分かってくると思うわ―――――いやでもね」
何か含みのある言い方に違和感を覚えるもここで深く追及するべきではないと考えた。
まだ他にも聞きたい事は山ほどある。
「確か、上級古代竜種って言ったっけ? あのドラゴンは力を持った人間を集めてるって言ってたけど、理由はあるのか?」
洸太郎はずっと気になっていた事を訊ねる。
自分や蒼樹、そして話を聞く限りでは輝夜や小燐も同じく連れてこられた、と言う事は恐らくだが連れてこられたのは四人だけという事はありえないだろう。
その辺りを聞くと、輝夜は呆気なく「あるわよ」と言った。
「これは―――――そうね、本人に直接聞いた方が早いかもね」
そう言うと輝夜は保健室の窓を開きただ一言、
「来て、
その一言を告げると辺り一面が暗くなった。
日が落ちたのか? と思ったがそうではない事に洸太郎は気付く。
彼らがいる校舎の上空を一匹のドラゴンが旋回していたのだ。
「―――――――――――――――」
「―――――――――――――――」
二人は絶句する。
先ほど輝夜が言っていた事は正しかった。
飛翔していたドラゴンは彼女の一声で二人の目の前に降り立ったのだ。
窓の一面には爬虫類特有の縦の瞳がギョロリとこちらを向いている。
そして、
「グ、オオオオオオオオオオオオオォオォォォオォォォオォォォォォォォオォォォォォォォォォッッッッッッッ!!」
至近距離での咆哮をまともに受け意識が遠退く。
何とか正気を保とうと蒼樹を後ろに下げ洸太郎が前へと出る。
そして、
「(こんな大きいバケモノは初めてだな)」
どう対処しようかと洸太郎は拳を握り締め自然に考えていた。
「(―――――って何で俺はこんなの相手に戦おうとしてたんだ?)」
軽く頭を振って今考えていた事を否定した。
先の戦いでも思ったが、記憶を失う前の自分は随分と好戦的だと思ってしまった。
記憶を取り戻した時、一体自分は何を思うのだろうと背筋が凍るような感覚を覚えた時だった。
「あぁ、すまないね。威嚇をするつもりは無かったんだが紅月輝夜が儂を呼んだという事は事態が少し進展する兆しが見えたと思い興奮してしまったよ。許しておくれ」
少し古風な喋り方に一瞬輝夜が喋ったものだと思っていたが彼女は少し悪戯をした子供のような少し親近感の湧く表情を浮かべた。
蒼樹とも顔を合わせるがもちろんお互いが違うという事は何となく分かった。
ならば―――――。
まさかと思い恐る恐る正面にいる
「カカッ! 改めて―――――初めましてと言うべきかの? 儂は
厳つい顔をしている割にはかなりフレンドリーには接してくれているが、ドラゴンはどこまで行ってもドラゴンだ。
慣れるとかそれ以前の問題だ。
チラリと横を見ると、案の定と言うか何と言うか、蒼樹の顔はマネキンのような表情になっていた。
もう情報がいっぱい過ぎて洸太郎も倒れれば楽になるのかな? などと思ってしまった。
そんな二人の様子を見て輝夜は横でクスクスと笑っている。
絶対に楽しんでいるな、と思いながらも洸太郎はフェスに近寄っていく。
「じ、じゃあフェス―――――でいいんだよな? 聞きたい事が」
「改めて言わんでも聞いておったよ、百鬼洸太郎。儂は耳は良い方じゃ」
何処に耳が付いてるんだ? という疑問は今は置いておくことにした。
このままツッコミ続けてはこちらの精神が保てない。
「そうじゃの、主の質問は『何故、力のある者を集めているのか?』じゃったな。それはこちらの勝手な都合で申し訳ないんじゃが、簡単に言えばこの世界樹の園を救う手伝いをしてほしいんじゃよ」
フェスの言葉に今度は蒼樹が聞き返した。
「世界を―――――救う手伝い?」
「そうじゃ。紅月輝夜から話は聞いていると思うが、今この世界―――――いやこの世界だけでなく全ての並行世界は『大禍刻』と言う終焉の災害によって滅びつつある。そこまでは聞いておるの?」
洸太郎と蒼樹は頷いた。
「
フェスの話を洸太郎は呆然と聞いていた。
そして彼? が語った事は洸太郎達が想定していたよりも複雑で厄介な状況だという事が分かったのだ。
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