『システム』と呼ばれる魔道具
「この世界に降りたとき、誰もが不安に思う壁がある。 それは言語の壁だ。 この世界に降りて、初めて人に話しかける時、言語が通じれば良いのにと思いながら声をかける。 そして、自分の言語が相手に伝わったことに安心し、そして他の人にも自分の世界の言語が通じて「この世界はこういうもんなんだ」と納得する」
「マコトちゃん、何言ってるの?」
説明を始めた僕に対し紫炎が困惑する。
「僕の魔道具の能力は『言語統一』だ」
「な!?」
全員が驚いた。
「そして魔道具はこれだ」
僕は地面を指さした。
「おい」
「まさか」
「浮遊島!!」
三人がどよめく。
僕と女王はしっかりと目を合わせる。
お互いに、頬に汗が流れる。
女王がイヤリングをつけようとした。
「解除!!」
空気が歪む感覚がした。
最後に、能力を解除するのは『人を笑わせる魔道具』を持った吟遊詩人に襲撃された時だろう。
あの能力は、言語が相手に伝わっていないと発動しないみたいで、僕の能力を解除して解決した訳だ。
「空気が歪んだ感じがした、何が起きたの? 」
紫炎は何かに気付き、同様を隠せずにいた。
「やはり日本人か…… 今は僕の能力を解除した所だ」
僕は紫炎の様子を見て連携が取れそうだと安心した。
「隱ュ繧√↑縺??ヲ窶ヲ」
女王は焦っている。
「どうする? 」
紫炎が僕に聞く。
「女王の魔道具は僕と同じく戦闘向けじゃない。 サムを倒せば終わる」
僕と紫炎がサムの方を見ると、手をこちらに向けた。
それを見た紫炎は咄嗟に懐から杖を出す。
「ッシュ!!」と風を切るような音がなった瞬間、目の前に炎の壁が出来て僕たちを守る。
「流石の瞬発力だ」
「褒めても何も出ないよ」
紫炎は眉間にしわを寄せながら、サムの飛び道具を落す。
「サムの能力は紐を操る能力だ。 おそらく木に糸をかけて、凄い速さで引っ張りクロスボウのような方法で何かを飛ばしているのだろう」
「敵の狙いは、私の手ね。 杖を落せば勝ちだと思ってるみたい。 凄い精度で狙ってくる」
「なるほど。 ならあれが使えるな、練習したか? 」
僕は紫炎に聞く。
「ばっちり、もう出来てるよ」
紫炎は答えてくれた。
風を切る音が止み、紫炎は炎を解除する。
僕たちとサム達はお互いに距離を取りにらみ合う。
紫炎が杖を真上に上げた瞬間に、サムが紫炎の杖に向けて手を向けた。
「シュッ!!」と風を切る音がする。
その矢は紫炎の持つ杖の上を通り抜けていった。
サムが焦ったように何度も紫炎の杖に向けて飛び道具を撃つが当たらなかった。
「弾切れのようだね」
サムの様子を見た紫炎が言う。
上位蜃気楼、下が冷たく、上が暖かい状態で起きる現状。
空気が光の経路を捻じ曲げる為、サムは紫炎に攻撃を当てられなかった訳だ。
紫炎はこの空気の状況を練習して使えるようになった。
「よし、反撃だ」
「まかせて!!」
紫炎は杖をサムに向けて火を放つ。
しかし、サムの前に白い縄があらわれて炎を防いだ。
「何あれ? 」
紫炎が驚く。
「漆喰だ……」
「漆喰? 」
「水酸化カルシウムを主成分とした建築材料だ。 防火性能があるため、あんな縄に塗りたぐって炎の攻撃を防ぐのにはもってこいだ」
「なるほど」
亡命前、炎の男と戦った時に使った策がこんな形で使われるとは思いもしなかった。
そして、漆喰を用意しているという事は僕たちが反発する事を予想していたとも言える。
これ以上炎を使っても無駄なため紫炎は炎を止めた。
その瞬間、白い縄が先端を丸めて、僕たちに迫ってくる。
「これは殴り殺しに来るみたいだ」
紫炎は僕を抱えて、炎を噴射させ飛び、縄を避けた。
縄は思いっきり壁に当たり、白いかけらをボロボロと地面にこぼした。
「マコトちゃん、どうしたらいい? 」
紫炎は困った様子を見せる。
僕は周りを見渡して紫炎に指示する。
「あの、プールに最大火力で火を撃って」
「わ、わかった」
紫炎が部屋のプールに炎を当てた。
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