両手にプラズマの花

「では、宮殿に入りましょうか……」

「おい」

 女王陛下が宮殿に入ろうとした所を僕たち三人で声をかける。


「あら、ついてきたのですね」

 女王陛下はいたって冷静だった。

「話は聞いてた。 僕はそれを認めたくない」


 僕たちと女王陛下達は向かい合い、じりじりと距離を詰める。


「これまで一緒にやってきた仲間に、こんなこと言うのはなんだが。 その世界の作り方は間違ってるんじゃないのか? 」

 人はそんな簡単に変われない。

 しかし、変わってほしかった。

「ふぅ、貴方たちに関わっている暇は無いというのに…… アトラク、堅い守りの能力でこいつらを押さえないさい」

 女王は僕たちの声を無視し、アトラクを残し、サムと共に宮殿の方に入っていった。

 たった一か所の入口をアトラクが守ろうとしている。


「こっちまで来ないようだね」

 紫炎がつぶやく。

「彼の役目は僕たちを宮殿に入れないことだ。 倒す事じゃない」

 僕の頬に汗が流れる。

 アトラクとはこの前、共闘した。

 その強さは僕も知っている。


「アイツの能力は? 」

 ノヴァが僕に聞く。

「鉄を操る能力だ。 近ければ近いほど強く操れる」

「なるほど。 なら、ある程度の距離を取らないと体内の鉄分を操られるな」

 ノヴァが顎に手を置く。

「女王がどんな方法で目的を達しようとしてるか、予想が付かない。 君たちには私を置いて先に行き、女王を止めてほしい」

 ノヴァが僕と紫炎の顔を見る。

「一人で大丈夫か? 」

「私は勝算の見込める戦いしかしないよ。 あれを見て」

 ノヴァが宮殿の壁を指さす。

「ヒビが割れて、3箇所ほど壁の向こうまで見える。 あれを破壊すれば女王を追える」

 ノヴァの話を聞いた僕と紫炎はお互いに頷いた。

「あと、これを渡しておこう。 私の魔道具を活かすために作ったが、君達でも使えるだろう」

 そういってノヴァが小さな袋をくれた。


 宮殿に突入開始だ。

「紫炎、この方法は君をニヤニヤさせるだけだから、やりたくないんだが……」

 僕は、紫炎に抱きつき胸に顔をうずめる。

「あらあら、マコトちゃんったら甘えん坊さんねぇ」

「そう言う事を言うから、この方法は嫌なんだよ」

 僕は声を低くして言う。

「お前ら、いつもそんなことやってんのか? 」

 それを見たノヴァは少しドン引きした。

「いや、してないから」

「毎日してる!!」

「お前は黙ってろ!!」

 ノヴァは僕たちを冷ややかな目で見つめている。

「まぁいい、新しい扉を作るとしよう」

 ノヴァはポケットから、筒を取り出しアトラクに向けた。

「バン!!」という音の少し後に、壁が崩壊した。

 自分が撃たれると思い身構えていたアトラクは驚き壁の方を見る。

 ノヴァのフェイントが成功したみたいだ。

「不意は付いた!! 飛べ!!」

 ノヴァの声を合図に紫炎と僕は、地面を蹴り壁と反対方向に炎を強く放つ。

 炎の推進力で壁の穴から宮殿内に侵入する。

「させるか!!」

 アトラクの砂鉄が、僕たちを襲おうとした瞬間またもや「バン!!」という破裂音が後方から聞こえた。

 僕と紫炎が宮殿内に飛び込んで振り返る。

「流石に本体を狙うと止められるか……」

 アトラクの目の前に、おそらくノヴァが飛ばしたであろう鉄の弾が浮遊していた。

 それを見たノヴァがニヤリと笑う。

「何やってる!! 行け!!」

 ノヴァが叫んだ。

 僕と紫炎は宮殿の奥に走り出す。

 普段、ドレスで走ると辛いが、今はクリノリンで開かれているため多少マシだった。



「私の魔道具を台座に乗せれば、準備が始まります。 さぁ、始めましょう」

「間に合ったか……」

 女王を追い、宮殿の中心部に到着した時、まだ融合は開始していなかった。

 申請そうな雰囲気の部屋で、壁に描かれた模様は神々しく輝き、部屋の四方には水がためられたプールがあった。


「サム、私が彼らの心を聞き、指示を出します。 彼らを縛り上げてください」

 女王が指示する。

「どうするの、いくら策があっても心を読まれたらおしまいだよ」

 紫炎が動揺した。

「聞くって事は、心の声が聞こえるって事か?」

 イヤリングをつけようとした女王に僕は聞く。

「はい、私の魔道具には相手の心で思っていることを言葉で聞く力をもっています」

「なるほどな……」

 僕は勝利を確信し、一息つく。

「どうしたのでしょう?」

 女王は首をかしげる。

「僕の勝ちだ。 理由は僕が『システム』だからだ」

「!? 」

 空気が凍るのを感じた。

 女王が魔道具をつける手を一旦止める。

「本当、マコトちゃん、本当なの? 」

 紫炎が僕を疑うように見る。

「あぁ、あの『気圧を操る男』がシステムを自称していたが、『システム』というのは、もっとこの世の確信に迫る何かだ。 力業で押すような能力じゃない」


「私にハッタリは不可能です」

「さて、ハッタリかな」

 僕と女王はお互いに、にらみ合う。

「でしたら、その『システム』の能力とやらを使ってみてはいかがでしょう? 」

「僕は既に能力を使っている」

「は? 」

 僕の発言が意味不明なのか、全員が僕に対して顔をしかめる

「僕の能力は女王陛下と相性が良い、とても良すぎるんだ」

 僕は周りの反応を無視し続ける。

「能力を発動させるんじゃない、解除するんだ」

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