女王の狙い、僕の気付き
「これに乗れば浮遊島に行ける」
僕は床のパネルを指さす。
「マコトちゃん、なんでそんなもの知ってるの? 」
「異世界の古い書物で読んだんだ」
僕たちはパネルに乗り浮遊島までテレポートした。
下から見ると崖ばかりの浮遊島の上には、木が生い茂った豪華な庭園、大きな池、そして大きな宮殿がそびえたっていた。
崖から下を眺めると、あまりの高さに氷を突きつけられるように委縮してしまう。
今の僕の姿はクリノリンで開いたドレスでスカートの中が見えそうだが、この高さなら気にする必要はないだろう。
「女王陛下のお出ましのようだ」
ノヴァの言葉を合図に僕たちは茂みに隠れた。
「これが、この世界の全てに影響を与えると言われる浮遊島ですか……」
女王がつぶやく。
「はい、これで女王陛下の望みも叶うでしょう」
アトラクが返答する。
「全ての人が信じあえる世界。 私たちで作り上げましょう」
サムが女王陛下に笑顔を向けた。
「全ての人が信じあえる世界を作る? 」
凄く嫌な予感がする。
僕には、人が信じあえる世界なんて作れないと思っている。
人は全てが自分のための行動をしているからだ。
他人のために自分を犠牲にしたとしても、そこには気に入ってもらいたかったり、自分の生き方を貫くためだったり、自分の為の行動に他ならない。
そんな人間が、他人を簡単に信じる世界なんて作れるはずがない。
「陛下、これを……」
アトラクが、宝石箱を取り出して女王陛下に渡した。
「私の魔道具は、他者の心を聞く能力を持っています。 それを浮遊島と融合させて、この世界全ての人に与えます」
全てが見えてきた。
心を読む能力の前では嘘をつく事ができない。
隠し事も、ごまかしも、全てを相手にさらけ出す事になる。
だから、お互いを完全に信じあう事が出来る。
「女王陛下が普段人前で魔道具を付けなかった理由、なんとなくわかった。 一方的に相手の秘め事や隠している事がわかってしまうのを、フェアじゃないと考えていたみたいだね」
紫炎は女王陛下の方を見ていた。
かつての僕ならば、それに賛成していたと思う。
半ば無理やりな方法で信じあえる世界を作る。
それは、素直に他人を信じるきっかけとなる。
でも、今は自分の心を読まれたくない。
特に、紫炎には。
なんか、彼女に可愛がられるのは悪い気がしないんだ。
その心を読まれると、きっと紫炎はニタニタ笑いながら僕をからかうだろう。
それが、なんかムカつく。
「僕はこんな方法で、全ての人が信頼し合える世界を作るなんて認めない、二人はどう思う? 」
「私は自分の商業も工業も行う、心が読まれれば交渉もしにくい。 反対だ」
ノヴァが答える。
「おやおやおや~。 これに反対するだなんて、マコトちゃん私に何か隠してるの? 」
紫炎が僕をからかった。
コイツは、心が読めようが読めまいがムカつく。
「まぁ、私にだって隠したい事の一つや二つは存在するよ。 止に行こうか」
僕は紫炎とお互いに見つめ合った後、頷いた。
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