女王の不穏な動き
結論から言えば、セプラテラは滅んだ。
ノヴァがこちらに付いたことで決着は付いていた。
降伏が降伏を呼び、セプラテラの全てを占領することに成功したわけだ。
その代償として……
「はーい、こっちむいて~」
「ストン」とシャッターの落ちる音がした。
乾板のフィルムに、魔法少女となった僕が映る。
レトロ感あふれる白黒に魔法少女のコスプレというのは、ミスマッチで不思議な感じだ。
セプタテラの城は浮遊島のすぐ近くにある。
どうにかして上がれないかと考えてみたが、何のために使うかわからないものに触れるのも良くないなと断念した。
「技術的に、まだこれを印刷することは出来ない。 だから最初は各国のお偉いさんに送りつける。 そして収益が出たら、大衆向けにする。 カメラも普及させる。 そして『アルミ王』だなんてダサい称号は捨ててやる」
ノヴァは早口で夢を語っていた。
『アルミ王』とかいう称号、気にしてたんだ。
「これ、全部くれるって本当?」
紫炎はノヴァから貰った乾板を、かじりつくように見ていた。
「あぁ、試し撮りだからね。 それに、君は女性人気が出そうだ。 また今度、撮影させてくれ」
「やすいもんだ!!」
紫炎は笑顔で手を上げる。
「撮影の時、その笑顔はするなよ。 男装してキリっと撮影するんだ。 その写真は、貴婦人に高く売れるだろう」
ノヴァは顎に手を当てた。
「じゃあ、試しにツーショットを撮ってよ!!」
紫炎が提案した。
「わかった。 余計に作っておいて正解だったよ」
こうして、僕の意見も聞かず、紫炎とノヴァは盛り上がり始めた。
紫炎は僕の肩に手をまわして、一枚、二枚と写真を撮っていく。
紫炎の笑顔を見て、戦いが早く終わって良かったなんて思ってしまった。
◇
撮影会の休憩、旧セプラテラ城のバルコニーから庭を見渡す。
既に日は落ちていた。
大きな満月が木々を照らし、幻想的な雰囲気を演出する。
「おつかれ、少年」
ノヴァがタバコを吸いに出てきた。
「タバコまで発明してたのか? 」
「あぁ、我慢できなくてね。 乾燥させた柿の葉や様々な植物を組み合わせて作ったオリジナルだ」
ノヴァはタバコを大きく吸い、先端を赤くさせた。
「っふー…… それにしても、君がメニナちゃんだったとはね」
「知ってたくせに」
「…… 知ってたよ。 兵士たちに囲まれた君の反応は実に面白かった」
ノヴァは目をクシャっとさせて笑った。
紫炎が、賢くなってもう一人増えたと考えると少しめんどくさいなとも思ってしまう。
「その服装は君の趣味なのかい? 」
ノヴァは悪戯そうに僕の服装を指さす。
真っ黒なゴシックロリータ、スカートはクリノリンで大きく開かれて、お腹はコルセットでがっちりとしめられていた。
どうせなら色々な姿の写真を撮っておきたいって紫炎の要望のせいだ。
特に話すこともなく、バルコニーでノヴァとボケーっとする。
「あれは、君の所の女王陛下じゃないのか?」
ノヴァが庭を指さした。
そこには、女王陛下がサムとアトラクを連れて歩いていた。
どうやら浮遊島の真下に向かって行っているらしい。
「私は前世が研究者という事もあって、気になった事はとことん追求したい趣味なんよ。 私たちが何故、この世界に飛ばされたのか? 他にも異世界はあるのか? パラレルワールドは存在するのか? 色んなことをね。 今はあれ」
そういい、ノヴァは浮遊島を指さす。
「紫炎を呼んでくる、何が起きるかわからないからね」
「まかせた」
◇
紫炎とノヴァを連れて、女王陛下と付き人二人の後を付ける。
「あ!! 浮遊島の下で立ち止まったよ」
紫炎が小声で言う。
サムが太い縄を空に向かって飛ばし、アトラクと女王陛下を連れて上に上がろうとした。
「んん~、浮遊島に何の用があるのだろうか? 」
ノヴァが顎に手を当てる。
「何かの調査なら良いんだけど……」
紫炎が眉をひそめた。
この二人は浮遊島がなんなのか知らないだろう。
女王陛下とアトラク、リーガルもきっとその正体に気付いていない。
この世界で浮遊島がなんなのか知っているのは、僕だけだ。
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