第四章 テーマパーク

 後日、テーマパークのチケットの抽選結果が、メールで届いた。私は、あっくんに電話をかけた。

「あっくん、テーマパークのチケットの抽選結果、見た?」

 私が興奮気味の声で訊いた。

「落選だった。あおいも落選だったって、メールが来てた。みやちゃんは?」

「良かった、落選で。ほっとした」

「もしかして、当選したの?」

 急に、あっくんの語調が明るくなった。

「当選したの。うれしいから誰かに言いたくて、電話しちゃった」

「すごいね。今年、当たり年かも。みやちゃん、お年玉付き年賀状も当たったんだよね。年末ジャンボも、買ったら当たるかも」

「そうだね、買ってみようかな。それで、テーマパークには、誰の車で行く?」

「おれの車で行こう。途中であおいを乗せて、通り道だからみやちゃんの家に迎えにいくよ」

「お願いします。テーマパークが午後でしょ。隣の公園でお弁当を食べて、時間まで待っていればいいかな。あおいにも、連絡しておくね」

「あおい、きっとすっごく喜ぶよ。がっかりしてたから、絵文字が」

「お弁当、何がいいかな?」

「おれは、何でもいいよ。楽しみにしてる」

「期待してて。あ、インフルエンザの予防接種は予約した? 今年、ピークが早く来るみたい」

「そうなんだ。予約はしてあるよ」

「私も、予約した。じゃあ、元気でね」

「みやちゃん、電話、ありがとう。実は仕事で失敗して、少し落ち込んでいたんだ」

「大丈夫?」

「テーマパークの話で、元気をもらえたから、大丈夫」

「メールしようか迷ったんだけど、電話して良かった。あっくん、私でよければ何でも話してね。話すだけで、楽になることがあるかも」

「みやちゃんこそ、ひとりでがんばらないで、何でも話して」

「ありがとう。また、電話するね」

「待ってる」


 電話を切ったあと、しばらく考えていた。大学時代は、お互いに将来の夢や希望、悩みや疑問など何でも話して、思いっきり笑ったり泣いたり怒ったりしていた。なんて幸せな時間だったんだろう。好きな講義を受けて、仲間と語り合いながら、学ぶ。本当に貴重な限られた時間だったと今は思う。


 人生の中で、学べる時間はいったいどれくらいあるんだろう。私は、これから何を学んでいけばいいのだろう。仕事をこなしていくための知識や情報を学ぶ時間さえ、足りないのに。もっと時間がほしい。私は、学生時代からずっとそう思ってきた。時間の使い方が、上手になりたい。


 そして、テーマパークに行く日が来た。その日は、朝から雲ひとつない快晴になった。

「テーマパーク日和だな、今日は」

 あっくんが空を見上げて、つぶやいた。

 私達は、芝生広場でピクニックを楽しんだ。青空の下で食べるお弁当は、本当においしかった。

 テーマパークは、思っていたよりもずっと楽しかった。私達は、アニメの世界の住人になった気がした。いつまでもここにいたいと思った。

「このテーマパーク、最高。やっぱりアニメ好きだなあ」

 そう言って、あおいが満面の笑みを浮かべた。

「私も、アニメが大好き。もう一度映画が見たくなった」

「おれも、全部映画館で見たい」

「また、三人で来たいね」

 私の言葉に、二人は大きくうなずいてくれた。私達は、オリジナルグッズをたくさん買って帰った。私は、またチケットが当たるといいなあと思っていた。

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