第8話 扉の先は?
床の木材の一部がまるでゴムのように天井に向かって伸びていく。と思ったら今度は縮んでいく。さらに複雑な枝葉のように絡み合い、また伸びたり縮んだりを繰り返していく。
私はその様子を
きっと大きな口を開けていたに違いない。
そんな私を
動きを止めた後に、床に残ったのは真新しい椅子だった。かなり古風でオシャレな椅子。大きな背もたれにひじ掛けも用意されていた。
私は言葉が出てこなかった。目の前で起きた数秒の出来事が余りにも現実離れしている。手品でした、とネタ晴らしされても、手品であることを信じる方が難しい。
驚きはもちろんだが、同時に不安が頭をもたげた。
「あの、ここは日本ですよね?」
「そこがあなたの生まれたところなの?」
「日本って聞いたことないですか?」
「ええ。けど、私たちは外の世界のことをほとんど知らない」
「知らない? それはどういう意味ですか?」
私が首を傾げると、彼女は部屋の扉の方に視線を向けた。
「外に出ればわかるわ」
その一言が私の焦りを加速させた。
部屋に窓はない。この空間の外がどうなっているのかわからない。
なんだか知りたくない。知らない方が気持ちは穏やかでいられる気がした。
しかし、私の目の前にいる彼女はそれ以上口を開こうとはしない。見た方が説明する手間が省けるということだろう。
彼女を待たせている手前、このままじっとしているわけにもいかなかった。
私は意を決してベッドから離れ、彼女を追い越して扉の方へ歩を進めた。
扉は木製でこれまたいびつな形をしている。私は扉の取っ手を握る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます