第7話 加護
まあ、スマホがあるだけましだと電源を押してみる。黒い画面のまま反応がない。何度も押してみるが、やはり起動する気配がない。バッテリーがなくなったのか、いや、充電は一日一回はするので切れることはないし、落としたこともない。
じゃあ――と、そこで自分が川で溺れていたことに気づいた。
どうやらスマホは水没して使えなくなったと考えた方がよさそうだ。
スマホを持って固まったままの私に、金髪の少女は首を傾げた。
「それは鏡じゃないの?」
確かに動かなくなったスマホの使い道なんて、この黒い画面に反射した自分を見ることぐらいしかない。
「一応、電話なんです。壊れてるみたいですけど」
「デンワ」
「離れた相手と話せるんです」
「――っ!」
少女はまるで電流が走ったように目を大きく見開いた。
なんか面白かった。スマホでここまでの反応をされると、新鮮な気持ちになる。
私は少し興奮気味の彼女にスマホを渡した。
正面。側面。裏面。
彼女はくるくるとスマホを回転させて、また正面のディスプレイに戻り、じっと
「綺麗。つるつるしてるし、手に馴染む感じがする。これはなんて加護の力なの?」
「加護?」
私が眉をひそめると、金髪の少女は首を傾げた。
「加護の力じゃないの?」
「加護というか、科学の力というか」
どう答えたらうまく伝わるのだろうか。
そもそも本当にスマホを知らないのか疑ってしまう。
尖った長い耳は確かに見たことはないけど、そういう人がいるのを、私がただ知らないだけかもしれない。世の中は広い。
そんな私の考えを彼女はすぐに
「加護というのはこういうの」
そう言って、彼女は床に向けて手をかざした。
私は
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