大人になることを強いられる主人公の独白、仕草、その描写の一つ一つが、作者様の詩集にも通底する生々しい生の感覚としてありありと訴えかけてきます。
「勘違い」だけど「的外れでもない」違和感を抱えたまま、世の中へと放り出される理不尽さ。
「共感なんか、されたくない」「認めてくれるだけでいい」。
それなのに。
持つ者と持たざる者の絶対的な隔たりを前に、巡る思考も言葉に出してしまったらどうにもならないことを認めてしまわねばならなくなる、躊躇の末の諦念。
なりたい、なりたくないではなく、ならなければいけないのですね。