第26話 守護者
――プッチョンの指輪。
天空城の主たるプッチョンの加護が込められている、アクセサリー装備。
効果は全状態異常無効と、HPとMPが2倍。
さらに使用すると、再使用時間は長いがHPとMPが全快復する効果まで付いている。
正に破格の性能を持つ装備。
「これが無いと、隠しダンジョンの敵とか絶対倒せないからな」
隠しダンジョンの敵相手に、ソロで回復魔法を使う余裕などはない。
そのためこの指輪の効果――上手く使えば耐久力が4倍近くまで跳ね上がる効果は、ここでの狩りに必須だった。
俺は魔法陣の中心に進み、そこに浮かぶ指輪を手にする。
その瞬間魔法陣が光り輝き、重々しい声が響いた。
『我が力を欲する者よ。汝が力を示せ』
そして、目の前には筋骨隆々の身体つきをした巨漢の大男が現れる。
その背には、6枚の純白の羽が生えていた。
――天空城の主であるプッチョン。
その分身だ。
名前はプッチョンアバターでレベルは90。
登場の仕方からも分かる通り、こいつは宝の守護者である。
『それを持つに相応しき者か、我がみさだ――』
アバターが偉そうに喋っているが、俺はそれを無視して瓶を投げつける。
世界樹の泉の水が入っている、例の奴だ。
「め……」
瓶が砕け、水が奴の体にかかった瞬間、アバターの言葉がピタリ止まった。
俺はそんなアバターに向かっ軽く手を上げ――
「おつかれさん。じゃ、貰ってくわ」
――笑顔で別れの挨拶を告げる。
泉の水の効果は、敵の戦闘意欲を下げるという物だ。
これによって敵が攻撃してこなくなる訳だが、こういうアイテムはゲームの常で、ボス系には効かない様になっている。
そしてこの守護神は、ボスではない。
そう言う事だ。
俺はぼーっと突っ立つ、6枚羽の天使を放置してさっさとその部屋から出た。
「さて、次は武器だけど……」
天空城で戦闘せずに手に入るアイテムは、今手に入れた指輪と武器だけだ。
此処で手に入る武器は守護者シリーズと呼ばれ、腕に嵌めるガントレットと一体型の小型の盾に、更にそこに武器が合体した様な物となっている。
漫画なんかで、小手から刃が生えてる様な武器が偶にあるだろ?
あれの盾版だと思って貰えばいい。
因みに種類は剣、斧、魔砲、鞭(刃と刃を繋げた様な形の鞭)の4種類。
砲を除く武器は、武器部分が魔力によって形成されるため、使用時は少量づつだが常時MPを垂れ流す事になる。
要はMP消費型だ。
砲に関しては、発射時にのみMPを消費する感じ。
当然消費は他の武器より多目。
「全部は水的に辛いから、鞭と砲は諦めるか」
水を入れたビンは100個用意してあるが、最初の指輪を取るのに20個近く使ってしまっている。
単純計算で1か所20個として、帰り道も考えると3つが限界だ。
が、イレギュラーが起きないとも限らないので、今回は欲張らずに2つにしておく。
どうせ扱えるのは斧と剣(気持ち悪くなるけど)だけだからな。
まあ砲は、適当でも扱えなくはないが。
武器の性能だが、4つある隠しダンジョンで手に入るの武器の中では、攻撃性能は控えめとなっている。
盾との一体型――防御性能も兼ね備えているからだ。
それでも、通常の武器よりはかなり強力だが。
盾の効果はガード時の衝撃の緩和――パワーで吹き飛ばさたり、貫通ダメージを減らす。
防御時に確率で発生するショックの状態異常――相手の動きが一瞬止まる。
この二つ。
両方とも盾で防いだ時という限定された効果ではあるが、かなり優秀だ。
そしてこの盾の効果こそ、俺のレベル上げの必須パーツとなっていた。
他の隠しダンジョンにもバグで入れるのだが、俺がここを選んだのはそのためだと言える。
俺は水で戦乙女共をスルーしながら移動。
かつマッチョ守護者も無害化して
「さて、それじゃあ――」
俺は白銀の盾。
斧を右手に。
そして剣を左手に装備する。
ダブルシールド&ダブルウェポン。
本来な絶対成立しえないこの組み合わせを可能にするのが、守護者武器の良い所だ。
まあ剣は刃を出すと気持ち悪くなるから、左は純粋に盾としてしか使わないけど。
狩るのはピンクのデカブツ。
エアイン。
この天空城で最もくみしやすい魔物ではあるが、そのレベルは82と高いので当然油断できる相手ではない。
「始めるとするか」
俺は気合を入れ、狩りを開始する。
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