20.非人道的な方が笑えることもある。
それを聞いた
「や、やだ、
これだよ。聞いたところによると彼氏がいたこともモテたこともないらしいんだけど、ホントよく、変な男に引っ掛からなかったよな。ちょっと褒めただけでこれはあまりにも危なさすぎるでしょうよ。奇跡的に当たらなかったのか。それとも、昔は近くにガードしてくれる友人とかがいたんだろうか。
俺は気を取り直して、
「謙遜しなくてもいいですよ。だって、伊万里さんが勧める作品って大体面白いですし」
「そ、そう?えへへ」
うーん……心配。
そりゃ今俺が言ったことは全て本心だよ?本心だけど、言葉だけなら何も分かってないやつでも言える台詞じゃない。スタイルだけは良さそうだし、身体目当てのナンパ男なら、これくらいの盛り癖はありそうな気がするんだよなぁ……。
そんな危なっかしい編集とは対照的に、
「……神木は、センスがあれば優しい?」
「ん?どう、だろうな。俺としてはそういうつもりもないぞ。ただ、まあ、センスがある人間に出会えるってのは嬉しいことだからな。件の三匹なんかはそこからすれば正反対の、嬉しくない存在だな。うん」
「…………そう」
なんだろう。安楽城が何か言いたげなまま、口をつぐんでしまった。まあ、ちょっと不順な動機なのは間違いないしな、それに、
「俺は別にセンスだけで安楽城と友達やってるつもりはないぞ?」
「……そう」
なんだろう。ちょっとニュアンスの違う「そう」だった気がする。まあ、俺の気のせいかもしれないけど。それなりに付き合いは長くなったけど、未だに考えてることの全貌がつかめないんだよな。
「でも
伊万里が、
「そうなの?」
「まあ、一応は」
そう。
確かに、
そんな俺に、二見が疑問をぶつける。
「じゃあさ。もし、星咲さんが零くんに「シナリオ書いてほしい」ってお願いしてきたら、受ける?」
「(笑)」
「だから「そんなことあるわけないじゃないか、やだなぁ何言ってるんだよこの幼馴染は」みたいなことを表情一つで表すのはやめなよ」
「読めてんじゃん、表情」
それはともかくとして、
「まあ、そうだな……そんなことはまず無いとは思うが……もし、あいつにその気があるのなら、やぶさかではないな。最も、あの三匹と気持ち悪い会話をしてるうちは無理だろうけどな」
伊万里が不思議そうに、
「三匹って?」
二見が、
「星咲さんがよく一緒に居るクラスの女子です。零くんは非人道的だから、こんな扱いをしてますけど、ちゃんとした人間です。三人です」
「おいおい、俺がいつ非人道的な言動をしたよ」
「じゃあ聞くけど、あの三人にあだ名をつけるとしたらどうする?」
「三匹のま○こ」
「…………よく「非人道的」を否定出来たね」
「はっはっはっ、否定してないさ。ただ何となく聞いてみただけだろキャサリン」
「誰がキャサリンだ、誰が」
とまあ、一通りのボケとツッコミが終わったところで、
「ま、それは冗談にしても、あいつらに対して敬意を抱くようなイベントは無かったからなぁ。そもそも、あのオリジナリティの欠片もない異世界転生は、星咲があの三人を満足させるために描いてんだろ?あれで満足するような知能指数の低い生命体に敬意とか……ぷっ」
伊万里が、
「そ、そんなに面白くなかったの?その星咲さん?っていう人が描いた話」
これには流石の二見も言葉を濁しつつ、
「まあ……オリジナリティは無かった、ですかねー」
「嘘をつくな。今すぐ漫画を燃やして、作者を生き埋めにして、現代の焚書坑儒をしたかったですと言え」
二見が眉根をひそめて、
「それは零くんがしたいことでしょー……でも、まあ、あれをもし面白いと思うなら、私も友達としてはちょっと……無し、ではありますね」
「そ、そこは一致するんだ」
「まあ、なんだかんだ言って幼馴染ですから」
俺は横から囁くように、
「幼馴染に逃げるな。素直に「クソでした」と言え」
「それは零くんの感想でしょ」
「まあな」
「認めちゃうんだ……」
伊万里がやや驚く。彼女との付き合いも、俺の人生の中では長い部類になってきたが、未だに俺と二見の幼馴染特有のノリにはついてこれていない節がある。まあ、ついてこなくて良いけどね。俺も別に何か考えて話してるわけじゃないし。腐れ縁に近い相手との会話なんてそんなもんだ。
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