第55話
廊下には予想通り、坂巻先生が蘇らせた亡霊が彷徨っていた。
俺たちは離れないように俺は神澤の肩を抱き、軽部は陣内の肩を抱いて診察室1に向かう。
俺はしおりをかざし、後ろから襲い掛かる亡霊にも注意をしながらゆっくりと前に進んだ。
望月 愼介:「お守りに当てられたんだから成仏してくれよ」
目の前で消え去る亡霊の行く末を案じる。
もう何体の亡霊を消したか分からない。
麗奈と香奈の記憶では病院内の人数は少ないように思えたが、それより多い気がする。
おそらく事件前に病死した患者や、病院周辺の彷徨っていた亡霊が集まっていたのかもしれない。
握るしおりの光が弱くなっていた。
坂巻先生を倒すまで、お守りが生きているのか心配だ。
軽部:「なんとか診察室まで来ましたけど、どんどんここに集まって来ますね」
後ろを確認する軽部の言う通り、上の階から虚ろな目をした亡霊が俺たちの所にゆらゆらと集まって来ていた。
望月 愼介:「さっさと中に入ろう。やつらの死体は無いから壁を通り過ぎることは無いからな」
俺はリハビリルームに向かう前まで俺と神澤が調べていた診察室1に入り、素早く扉を閉めた。
陣内:「診察室には亡霊、いませんね」
陣内のホッとする声に俺はしおりを握る手の力を緩める。
神澤 真梨菜:「診察室には来れたけど……」
神澤は一度は調べた診察室にスマホのライトを当てて怪しい場所を探している。
各々、亡霊のいない部屋を自由に探し始めた。
神澤 真梨菜:「望月さん、何やってんの?」
扉の前から動かない俺にスマホのライトを当てて、神澤が近寄ってくる。
望月 愼介:「あ、いや……そんな手分けして探す必要もないと思ってな」
呆れた溜め息をつく。
神澤 真梨菜:「それ、どういうこと?」
望月 愼介:「先生はもう、地下室で俺たちを待ってる」
轟チャンネルの二人:「え?」
陣内と軽部は探索していた棚から、視線を俺に向けた。
望月 愼介:「あの危険な気配が下からダダ洩れなんだよ。軽部、お手柄だ」
俺は部屋の奥に設置された診察用の無機質なベッドを指さした。
最初に探索した時は神澤が調べてくれていたが、パイプの骨組みにカビ臭いベッドマッド、四角い枕というありきたりのベッドだったので何かが隠されている様な雰囲気は無かった。
望月 愼介:「鍵、あるか?」
軽部:「鍵が、というよりは、扉が見当たらなくて」
軽部はベッドの下にライトを当てて、薄汚れた床を調べるが扉らしきものは見当たらない。
床は白い正方形のタイルが敷き詰められていて、診察室2も同じ床だった。
陣内:「床下収納みたいな扉があるかなって思ったんですけど……」
陣内は床をぺたぺたと触る。
陣内:「仕掛けがあるような感じはしませんね……」
陣内は残念そうに立ち上がる。
神澤 真梨菜:「そういうの、開ける仕掛けって本棚にあったりするよね」
神澤は自分が一度調べた大きな本棚の前に立ち、ずらりと並ぶ本の背を指先で押していく。
ゲーム気分の神澤を無視して、俺は陣内と軽部が調べたベッドに歩み寄った。
俺が感じ取った危険な気配は、確かにこのベッドの下から溢れ出している。
望月 愼介:「古い建物に、そんなからくりは仕込まれてないだろ?」
神澤 真梨菜:「からくりは江戸時代からあるから、可能性はあるよ」
俺は陣内と軽部が調べた床を叩いてみるとコンコンと軽い音がする。
更にベッドから少し離れた床を叩くとゴンゴンという重い音がした。
望月 愼介:「入口はここで間違いないんだが、開けられそうな所が無い……」
軽部:「とりあえず、そこが入口確定ならベッド邪魔ですし退かしておきましょ?」
望月 愼介:「そうだな」
軽部の提案に乗り、男二人で診察用のベッドを持ち上げる。
陣内:「あ! 望月さん!!」
俺たちの代わりにライトで床を照らしていた陣内が、ベッドを持ち上げた瞬間、声を上げた。
俺と軽部はベッドを持ち上げたまま、陣内が指さす床を覗き込む。
軽部:「やりましたよ! 望月さん!!」
軽部は興奮したように顔を上げた。
ベッドを持ち上げた床には、丸い穴が開いている。
6枚の床のタイルは丁度ベッドと同じ大きさで、4つのタイルにはそれぞれ左上・左下・右上・右下にベッドの脚と同じ大きさの丸い穴が開いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます