第33話
その薄汚れた白い紙には「-」が縦に3個✕横に3個の合計9個描かれていた。
9個の内3個は赤色、1個は緑色で描かれている。
鍵を開けるためのヒントだろう。
陣内:「ダイヤル式の鍵だから、この位置の数字が鍵になるんですかね?」
陣内が箱の底を見て首を傾げる。
軽部:「あ! スマホの数字キーじゃん?」
陣内の隣に立つ軽部はスマホを取り出して、キーパッドを表示させる。
軽部:「えっと……2、4、6が赤で、9が緑ですね」
神澤 真梨菜:「でもダイヤルは数字3つだよ。これじゃないのかも」
神澤は小さな箱のダイヤル式の鍵を確認しながら溜め息をつく。
陣内:「電卓だと、配列が逆になるんで8,4,6が赤で、3が緑ですけど……色が違うって事は意味も違うって事ですよね」
陣内は電卓のキーパッドと薄汚れた紙を見比べる。
神澤 真梨菜:「必要な数字は3つだから、鍵になるのは赤で、緑は中に入ってる物に必要な数字とか?」
神澤は陣内と軽部の反応を窺う。
陣内:「確かに! そうかもしれない!」
陣内も神澤の意見に同意する。
神澤 真梨菜:「とりあえず、ダイヤル回してみよ」
神澤は小さなダイヤルに親指の腹を乗せる。
軽部:「じゃぁ、まずは246をお願いします」
神澤は軽部に言われたスマホの数字に合わせていく。
俺は謎解きが苦手なので、3人の閃きを頼りにしていた。
神澤 真梨菜:「ん~、開かない。違うみたい」
陣内:「じゃぁ今度は846を試してみてください」
陣内に言われた通りの数字に合わせるが、この数字も正解ではなかったらしい。
神澤 真梨菜:「これだけじゃヒントにならないのかなぁ……」
神澤は自分の閃きが違っていた事に肩を落とす。
軽部:「あと、こんな並び順ありましたっけ?」
軽部は顎に手を当てて考え込む。
神澤 真梨菜:「望月さん、なんかない?」
神澤は黙ってた俺に小さな箱を押し付ける。
望月 愼介:「分かんなくて、黙ってたんだけどな……」
だからと言って、この状況で考えることを放棄するのは良くないので、俺は小さな箱を受け取り、薄汚れた紙のヒントを見つめた。
この「ー」の配列を凝視し、閃け閃けと脳に念を送る。
陣内:「あの箱の中には何が入っているんですかね?」
陣内は神澤に尋ねる。
神澤 真梨菜:「ん~、受付にあったから看護婦さんが大事に保管してたものじゃないかな? 何かの暗証番号が描かれた紙とか、事務仕事もこなしてただろうから印鑑とか?」
軽部:「でも中からは、カランって音がしたから、紙よりも印鑑みたいに形があるものっぽいですよね」
音がすると軽部が言うので、俺は試しに箱を振ってみた。
確かにカランカランと、中で何かが音をっ立てている。
軽部:「まぁ鍵が開かないんじゃ、中身予想してもしょうがないですかね……。何か他にもヒントがあるかもしれないし、1階に行ってみますか?」
軽部が薄汚れた紙を凝視している俺に声を掛ける。
望月 愼介:「あぁ、そうだな。1階に……ん?」
俺は記憶の中に引っかかるものを感じた。
望月 愼介:「1階……あ! そうか、1階か!」
硬い頭の俺でも、閃いた。
神澤 真梨菜:「望月さん、何か閃いた?」
スマホを取り出した俺に、神澤は期待の視線を向ける。
望月 愼介:「1階の待合室の案内板だよ。ほら、これ見てくれ」
俺はカメラロールから1階で撮影していた案内板をタップして、3人に写真を見せた。
案内板には長椅子を意味する「ー」が9つ並んでいた。
神澤 真梨菜:「おお! 配列同じだ!」
神澤は俺の手から小さな箱を取って、底に貼られたヒントと見比べる。
陣内:「じゃぁ1階に行って、長椅子を見ればいいんですね!」
陣内は嬉しそうに声を上げる。
望月 愼介:「正解かどうかは分からんが、ここで悩んでるより調べに行く方がいいだろ」
俺の閃きが正しければ、長椅子に数字が隠されているはずだ。
俺達は周りを警戒しながら1階に向かった。
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