第14話


俺は腰を抜かしている昌暉の腕を掴み、しっかりと神澤の手を握って走り出す。


俺の声でようやく振り返った軽部の腕を慌てて陣内が抱え込む。


俺たちは一塊で廊下を走り、階段を駆け下りる。


ここは2階だ。


窓の外に立てる場所など無い。


あれは人間などではない。


夢に出てきた黒い少女を思い出し、鳥肌が立つのを感じた。


望月 愼介:「結局、同じじゃねぇか。クソッ」


俺は階段を駆け下りながら愚痴を吐き捨てる。


何が『夢とは違う』だ。


内装が違くても、今駆け下りてる階段は『夢と同じ』じゃないか。


そもそも下調べをしたわけでもないのに『夢と同じ』場所に廃墟があるではないか。


もう最初から『夢と同じ』なのだ。


ふふふ……


神澤 真梨菜:「ちょっと、こんな時に笑わないでよ!」


陣内:「わ、私じゃないですッ!」


神澤は笑い声に反応して後ろを走る陣内を見る。


だが陣内は涙目で必死に首を振った。


神澤 真梨菜:「じゃ、じゃあ……誰が笑ったのよ!?」


陣内:「知らないですッ! でも私じゃないですッ!!」


望月 愼介:「うるせぇお前ら! 喧嘩なら後にしろ!」


1階に足を付けた俺たちは、扉が開いたままの出口を目指す。


先程から声が聞こえない軽部が心配になり、俺は振り返って人数を確認する。


俺の右手には神澤が居る。


左手には昌暉。


その腕を掴む陣内。


陣内に腕を抱え込まれている軽部。


そして軽部の後ろで揺れる黒い人影。


憑いて来ている!


望月 愼介:「クソ! お前らもっと速く走れ!」


目と鼻の先に出口がある。


ここから出れば俺たちの勝ちだ!


ギギギギギギギギギギ……


望月 愼介:「なにッ!?」


神澤 真梨菜:「扉がッ!」


独りでに閉まり始めていたのだ。


ギギギギギギギギギギ……


バタンッ!


望月 愼介:「クソッ!!」


扉は俺たちの目の前で完全に閉まってしまった。


後ろを振り返ると、黒い人影は見当たらなかった。


ふふふ……。


だが笑い声が聞こえる。


閉じ込めた俺たちを、ゆっくりと追い掛けているのだ。


望月 愼介:「遊ばれてたまるかッ!」


俺は神澤と昌暉から手を放し、勝手に閉まってしまった扉に掴み掛った。


望月 愼介:「お前らも手伝え!!」


俺の怒鳴り声で、恐怖で混乱している4人が弾かれた様に動き出す。


5人で力を合わせて扉をこじ開けようとするが、ビクともしなかった。


内側にカギは見当たらない。


神澤 真梨菜:「どうしよう開かないッ!!」


神澤は泣くのを必死に堪えている。


望月 愼介:「もっと力入れろ!!」


昌暉:「やってるッスよ!!」


陣内:「ダメ! 全然動かないッ!!」


俺たちの力では、閉ざされた扉は動かなかった。


俺は振り返り、廊下の先を見る。


黒い人影は階段を降りて来ていた。


すーっと動く様は、歩いているようには見えなかった。


嫌でも人間ではないと分かってしまう。


望月 愼介:「クソッ!」


昌暉:「お、俺たち殺されちまうんだッ!」


陣内:「いやっ! 死にたくないッ!!」


望月 愼介:「チッ……」


このままじゃ、本当に殺されてしまうかもしれない。


出口が閉ざされているのなら、他を探すしかない。


ここに居ては全員殺られて、ゲームオーバーだ。


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