第42話 ただいま
中に入ると
そして、直接
「ただい……」
「おかえりなさい!」
本当に周りに人がいないことに
むぎゅっ
重力の低い出撃場を、一っ飛びでやってきたカンラギは、豊満な胸にラスターの顔を
「無事でよかった」
(やわらかい! ……じゃなかった。息ができない)
やわらかく大きな胸は、鼻と口を見事に
――ここで、死ぬのか?
先程の
――理想の死に方と言えば、確か腹上死だっけ?
ReXに乗っておらず、剣を持っていなくとも、ラスターは別に貧弱などではない。
だが酸欠によって残念な脳みそは、カンラギの
――もしかして、一番が腹上死なら、二番は胸に
「ありがとう」
「うっ、うん」
胸に
感謝の言葉に適当に返しながら、ラスターはどうにか息を吸い――女性の
「あなたのおかげで、
「ほうか」
優しくかけられる声に、ラスターは
「ありがとう。私はとても感謝してるわ」
ラスターの頭に手をやると、細長い指を
「……そう」
そんなことを言われるまで、感謝されるとはあまり思っていなかった。
実際、武術科はもちろん、整備士にとっても不満は多いだろう――エネルギー
なにも知らないからこそ優しくしてくれるカンラギに、ラスターは手を
優しさに甘えそうになるが、それに付け込むべきではないだろう。
そんな
「あなたがちゃんと生きて帰ってくれてほんと良かった」
ラスターの下ろしかけていた
「そう……か」
驚きと喜びがごちゃ混ぜになってラスターを
夜明けの
心配をしてくれる人なんて、それこそ
その姫様がしていたことを不意に思いだす。そして――
「
ぎゅっと抱きしめて言う。
死にそうな目にはあったものの、死んでいたらこんなこと自体言えないため問題ない。
全て予定通りに運んだ――実際、トリヴァスで使われている機体であり、バッテリーパックの開け方を知っていても不自然ではないため、全くそんな事はないのだが、予定通りだと言い張れなくもなかった。
「そう、それは安心ね」
「あぁ……」
どこか嬉しそうに抱きついてくるカンラギを、力強く抱きしめ返す。
……いい加減
いつまでもこんな馬鹿なことをしていても仕方がないのだが……どこか
カンラギ自身にも離れるつもりがないのか、ベタベタくっつきあったまま、ラスターは
ピタリと張り付いた胸の
こんな馬鹿なことを続けていては
いつまでも自分で離れられない
「
暖かみのある感触が
ラスターは静かに耳を
なぜわかったのか気になるが……青色に発光するピンクのヘッドフォンを付けているため、何かしら知るすべがあることを察する。
「みんな、あなたにあってみたいようだけど、どうする?」
「断る」
せっかく誰もいない状況を用意してもらえたのに、
「そう」
「あぁ!」
余計な気を回させないとばかりに、ラスターは力強い言いきる。
一目ぐらい会ってあげたらとか、くだらない
「じゃあ、早く逃げましょ!」
嬉しそうに言うと、両手を絡み合わせ、後ろへ引くように飛んでいく。
ラスターも身を任せて下に飛んでいくと、着地に
そして、ヴォルフコルデーのコックピットが自動で閉まると、さらにはチーンという音が
「
「!? なにが?」
つい
「便利だな、パルストランスとは」
「でしょ~」
えへへ~と笑う
すまし顔が似合う美人の
(ReXは想定内、エレベーターは
それでも、満面の笑みを向けられると
なによりも――
「使いやすかったよ。フルパルスコネクト――ありがとう」
ラスターの感謝の言葉に、カンラギはピタリと動きを止める。
「……どう、いたしまして」
「っ……」
殺気――ではなく
こちらに振り向いたカンラギの、感情を
澄ました顔でただただ美しく微笑んでいるだけだというのに、その
「じゃあ、行きましょうか」
「そ、そうだな」
エレベーターのもとに歩き出すカンラギに、思うところはあるのだが……他の人間に合うことに比べたら何百倍もマシである。
エレベーターに乗り込む彼女を追って、ラスターも乗り込むのであった。
「すまんな」
「どうしたの?」
エレベーターの中に入り、申し訳無さそうに謝るラスターをカンラギが優しく聞く。
「わざわざ、
「いえ、今回はしないのよ」
「そうなの?」
いくら正体を
「
「へぇ~、空のハイエナも役に立つんだな」
意地悪な笑みを
「仲悪いの?」
折り合いが悪いのは、武術科だけに限らないことにカンラギは驚いた。
「そりゃ、そう……でもないのか」
普通なら戦艦球を倒しにやってきてくれる最強のReX部隊であるメイリスは救世主
「戦艦級を倒してるとワラワラとやってきて、平然と
雑魚だとは感じないため、邪魔されること自体にあまり問題はないのだが、手柄が取られるのは非常に
今回のように、そもそも
「ごめんね。今回はあまり報酬が出せなくて」
「最初の予定通り分が
「色は付けさせてもらうわ」
そんなことをカンラギは色っぽく言いながら、エレベーターは目的地へと着いた。
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