第39話 一閃断空
気
これからの予定では、武術科に丸投げしてさよならバイバイのはずだったのに、楽させてもらえないらしい。
もしこのままにしておけば、どうなることやら――
ラスターから見れば雑魚を3体でも、彼ら武術科から見れば、
『どうしてこれを
この程度の敵に殺される
「はいはい、やればいいんだろ、やれば」
「
新たなる王の誕生を守るべく、わらわらと20体ほどのワームビーストがたかってくるが、ビームソードを起動して、邪魔するゴミを斬りつける。
「なっ!?」
揺ら斬りによって、今度は5体ほど斬り損ねたことに
「
取りこぼしの動揺を
「もしかして――」
原因に心当たりを見つけ出すと、すでに後方へと置き去りにした、残り一体を
「ブラックホールのせいか?」
久しぶりで、
「まぁいいか」
原因がなにであれ、すでにどうでもいい話。それよりも、共食いによって強化された、ワームビーストを倒す方が先決。
グチャ――と、音が鳴るわけではないが、
「うへぇ……これはグロい」
非常にグロテスクな光景に、ラスターは不満を漏らす。
「帰りてぇ……」
どうしようもなく本音。しかし、倒すタイミングとしては今が一番最適である。
「ちゃっちゃと殺すか」
気持ちを
「……そういえば」
ふと思い出だせれる命令――
『名前! を付けなさい』
『何に?』
ぷっくりと不満げに
「技にです! 何を聞いても剣を振っただけなんてダメです」
「えぇ……」
なんて
「じゃあ、相手が勝手に当たっただけ……はい、ごめんなさい」
目を三角に
「そもそも、どういう時に技なんてつくんです?」
ReXの剣技において、技名というのは存在しない――
「……すごいと思った時?」
「えっ?」
なんて
「すごい技を使った時です! たとえば、強い敵を倒す時とか、いーっぱいの敵を倒す時とか!」
「って言われても、いきなりはな……」
「揺ら斬り」
「えっ?」
「さっきの技の名前です」
ぷいっと顔をそっぽ向けながら、照れくさそうに言う。
「じゃあ――」
「次からはちゃんと付けるように! これは命令です」
ビシッと指差して、姫様に命令される。
命令されたのなら仕方ない。
「じゃあ――次からは、
ぱぁああっと笑顔が
『次からは剣を振っただけ禁止ね!』
『
――っといっても。
「剣を振って敵を倒すだけなのに、技名とか言われても……」
どうすればいいのかと
難易度の高い動きであれば、技名をつけたくなるのが人情だというのも理解できる――なんなら、さっきのエネルギー
「……ローリングブラスト(回避技)」
なぜか
「これ――一応、強い敵に入るよな?」
首を
ちなみに状況を説明すれば、ワームビーストがちょうど
武術科で習う常識として――習わなくても分かる常識に、
もちろん、そんなことを知らないラスターはガンガン気を逸らすし、そのせいで並みの人間なら、30%程で死にかねない状況を80%へと引き上げていく――もっともその程度では、危機の演出にすらならないが。
「揺ら斬りも使えないみたいだし、なんか、
「面倒だ、死ね」
当たれば
「一閃!」
一体のワームビーストを始末し終えると、反転して二体目を――倒す必要はなかった。
「断……空?」
先程斬り込んだ空間に
ブラックホールランチャーによって生み出されたブラックホール――重力力場がビームソードによって切れたばかりか、剣筋にそって断層ができていた。
「どういう
揺ら斬りが重力の
そんな浅い考えで振った剣は、上手くいかなかったどころか、最大限の効果を――理解不能な自体を引き起こした。
倒すつもりであった三体はもちろんのこと、ブラックホールの射線に
「終わっ……た?」
この場所にいる敵の全てが
そうではない敵――最初にいた1500体の生き残りが、
「本当に終わったか」
逃げた敵を追いかけてまで
先程のは一体なんなのか……カンラギあたりに聞けば、案外答えは返ってくるかもしれないが、そのための説明がうまくできると思えない。
「誰にも見てもらえないってのも案外……」
一人で戦いたいが、それでも一人で生きたいわけではない。
「これまでは……」
姫様が居てくれた。
守るために、
だから戦えた――今はもう近くにいない大事な人。
やるせなさに座席へと身を投げ出し、ドスンと音を立てて座り込んだラスターは、視界の
「姫様!?」
シートベルトを
「っ――な訳ないよな。そりゃ……」
白いスカート――ではなく白いローブ。
「そうか……あー、やっぱ最悪だ」
今はもう、姫様がいない。
しかし! 武術科はいる。
彼らは、仲間が死ぬ事を良しとしない。
だというのに――迷惑極まりない事に、自分達の見せ場がない事も許さない。
『邪魔だから引っ込め、全て俺がやる!』を認めない器量の低い
強敵は全て
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