第33話 バーサーカーナイト
ゴクリと
「無限に見れるわね……」
近づく敵も、
あまりにも簡単にやるものだから、何人かに彼の真似事をさせられるのではないかと
もっともそれをした結果……というより、第二の夜明けの
そもそも、なぜ
四方八方から飛んでくるエネルギー
その上でなぜか剣を振って見せると、ちょうど後ろから現れたワームビーストが死骸へと変わる。
もっとも、偶然だの運良くだと思うのは、カンラギから見た感想である。本人は、どこのも運の要素を感じていない……だが、実際そうでなければ、こんな心臓に悪い出来事の連続を対処できるはずもない。
――ReXに盗聴器を
あえて通信を切ってみると、静かな宇宙が悪いのか、存外ペラペラと独り言を話す人は多く、そしてそれらの大体が本音だ。
情報を手に入れるにおいて、これほど便利なものはない。
『おらよ!』
隕石を
傍で、後ろ側へと飛んでいく隕石も、わらわらと
「ラス、ター……」
氷を
ラスターが騎士をやっていた
そこでもラスターは一騎当千――ワームビーストもReXも、彼の剣の下に宙へと
「――無罪なの!?」
スクロールしながら見つけた、裁判記事の結果にカンラギは
味方に対する斬撃――フレンドリーファイアならぬフレンドリースラッシュとでも呼べばいいのか
それも明らかに故意であるが、無罪の判決に驚く――てっきり、有罪故にここに逃げたとばかり思っていた。
「精神錯乱による情状
つい先程見せた武術科への対応を思い返せば、想像は容易い。
トリヴァスでは、慣例としてブリュンセル――コロニーでの戦力十位以内に入る者が武術科の生徒を引率してのワームビーストを討伐する任務がある。
その中で、ラスターは遠くにいる千体、武術科はコロニーを
しかし、ちょうど近くにやってきた船団――宇宙を
そのせいで、ラスターの予想よりも早く、武術科達は
ここまでなら、まだ問題はなかったのに――
武術科の生徒の中でも、助けに行こうと考えた
そして、これからわかることは、ラスターはもっと全員にきっちりと、余すことなく
「まぁ無罪なら、それはそれでいっか」
てっきり弱みでも見つかるかと考えていただけに、
「あぁ、これはむかつくか……」
昨日の段階では読み込みが終わらなかった動画を見ながら、カンラギはクスクスと笑う。
暇つぶしで行われたラスターへの救援――いらないと、拒否の命令を発しているのだが、彼らはシズハラばりに話を聞かない。
この場合は、思い込みの激しい
いくらブリュンセルとはいえ、年下の子供であるラスターを助けなきゃという思い。
本人は戦いの
『帰れ! 死ぬぞ!』
『
そんな勇ましい言葉を言いながら援護に入る彼ら――だが、神経を逆
最初に行われた援護
「うわぁ、えげつな」
目を
ラスターに
理由は単純。この戦場において一番若いのはラスターで、武術科といえど戦場に出るのは基本高校生ぐらいになってからであり――つまり彼らは年上として、とても気を使っている。
常識、セオリーに則った正しい行為――別の言い方をすれば、教科書通りに行う間抜けの見本誌。
そのため、仲間の近くに敵がいれば、援護射撃にてできるだけ数を減らしてあげることが正しい。
過去に
そんな……くっそはた
一振りで十や二十の敵をたやすく
それどころか、一振りで倒せる敵の数は減っていても、
ReXのこと、ワームビーストのことについては、武術科の中でも
銃を基本戦術として進化してきた戦い方であるため当然ではあるが、ワームビーストと戦うには距離を取らなければならないという基本的なことは
ごく
経験未熟な彼らは、AIの補正によって仲間を撃つことはまずないが、それはあくまでAIのシステム道理に、ちゃんとしている仲間に限った話である。
ワームビーストに向かって飛び込む、常識バイバイな行為をするラスターに向かっては残念ながらビームは飛んでいってしまう。
当たる直前に、機体を横に向けて躱すのは、
『なにすんだ?』
戦場であるというのに、動きを止めて文句を言う。
『待ってくれ。誰にだって失敗はある』
誤射した相手ではなく、ラスターの近くにいる敵を
『帰れと言ったはずだが……死にたいのか?』
『後ろ!』
射線が重なり援護できない状態の中、後ろからワームビーストが迫るが、害をなす前に一刀両断にされる。
『お、お見事……』
『俺一人でやれる、だから帰れ。これ以上居たら……死ぬぞ?』
エネルギー弾やビームが飛び交う中で、くだらない話を続ける彼らの元にワームビーストがやってくるが、一キロをゆうに超える
『覚悟は出来てるさ』
『そうか――』
帰ってくれないことを理解したラスターは、そのまま誤射した相手に向かって飛んでいく。
『そんなに死にたいなら……殺してやるよ!』
『なにをする!?』
『俺の戦場に、雑魚はいらねぇ!』
仲裁に入るリーダーの機体を、逆V字にカットして手をもぎ取っていく。
そして、そのまま
『なにをする!』
やられた彼らの
『あぁ、そうか。最初からこうすればよかったんだ』
イライラとする
ワームビーストを倒すのに、手加減が必要である状況に対する解答をラスターは見つけた――見つけてしまった。
『ははっ、あははははは――命令だ。雑魚は全員消え失せろ』
ブリュンセルといえども、生意気な
そして――雑魚が全員消え失せるよりも早く。ワームビーストの討伐が終わった。
「
大事件としか言えない事態の裁判記録――その中の
救援者八十人中、ワームによる死因――ReXの手足がもがれ、動けなくなったところを襲われた機体も
「ありえるの?」
動画を
わらわらと現れた援軍への
だからこそ、被害に巻き込むことを気にせず、ついでとばかりに邪魔をする手段――ビームライフルや、それを持つ腕をもぎ取れば問題はないということまでは、カンラギとしても理解できるのだが……
「乱戦の中、そんな加減が出来るというの?」
冷気で冷えた指を咥えて、
それに――
「これは……知られたくないよね」
ラスター自身の
それだけではなく、初めて仲間を斬った
盗聴器越しに歓喜の声を上げて、ワームビーストをばっさばっさと斬り続ける様子を見ながら、カンラギは快楽に身を委ねていく。
成熟なんてものを超えた実力に反し、想像以上に子供っぽい態度。
ミレア=フォードとの
ラスターが戦っている間、これからの状況整理や準備に対して指示を出しながら、うっとりと見守っていく。
そうしているうちに……ヴォルフコルデーから警告音が
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