第32話 雑魚狩り
「静かだ……」
ラスターの横暴な意見により、管制室は大
無音というわけではなく、ReXの
「まさか……まさか、ここまでとは」
当時からすでに五年以上経っていることを思えば、ありえない話ではないかもしれない。
この機体が――当時乗っていたシュバルツクロスと同等の出力を備えたハイスペック機だなんて……
「ありえないだろ」
大は小を
しかし、十全に使おうとすれば、このヴォルフコルデーを使いこなせるものなどまずいない。
才能を秘めたものならどこかにいるのかも知れないが、その才能を開花させたものは片手の指どころか、
「なんで、専用機の性能をパクるかな……」
あの手のマッドな
この
だとしても、それを実行できてしまうあたり、とんでもない奴らだが……
「はぁ……」
これからを思えば、
「ちっ、来るなよ!」
殺気を混ぜて
ワームビーストは乗っている機体がどんな形であるかなどを気にしたりはしてくれないのだ。
シャープに作られたかっこいいフォルム――隊長機やエース機の見栄えが、特に良く作られる理由は、
それに隊長機を一
元は量産機ながらも、頭のネジがぶっ飛んだ奴らによって、中身も、側も
しかしながら、そんな努力も人間の感情を動かす
「雑魚のくせに……」
アクセルを
ぐるりと周る
手を
「あぁ、ホントイヤダ」
この感触、この気持ち。
「雑魚
そのせいで――ReXには乗りたくない。
「ほんと気分悪いなぁ!」
雑魚を切り刻む、快楽と興奮。戦い
「なんで、そんな弱いんだよ!」
「弱いものイジメみたいじゃないか……」
不満を
「だからほんと……戦いたくなんかなかったのにいいいい!」
こちらに向けて飛んでくるエネルギー
「だから――死ね!」
四方八方にワームだらけといった恐怖体験の有り様であるが、そんなことを感じるわけもなく、ラスターはヴォルフコルデーをその場で一回転させながら剣を振る。
ビームソードの
音のない空間で
そして、別のところでたむろする雑魚共の密集地帯を見つけると、そこへ向かって飛んでいく。
次から次へと
「
そのまま飛び込んだ密集地帯の雑魚を五十体――喜びに身を震わしたまま、あっさりと
「さてと、どうなってるのかしら……」
るんるん気分のハイテンションで、カンラギは生徒会室へと向かう。
技術家と操縦士の
ヘッドフォンをかけたまま生徒会室に近づくと、自動で
そして、中に入ると当たり前のようにドアが閉まっていく。
生徒会室の中は、これまでと様相が少し
生徒会メンバーのみが入れる場所。
ドアが開いているのは、カンラギの仕業だが、流石にこの部屋を作ったのはカンラギではなく、代々
「ぷはぁ~」
冷蔵庫から取り出したペットボトル入りの安物の紅茶を、ごくりと飲み干し一息つける。
そして、ロックグラスを取り出すと、氷生成機の前へと置く。自動で氷が投入されると、そこに紅茶を注ぎ込む。
さながらウイスキーみたいな色合いであるが、完全に好みと気分の問題である。
「しかし、暑いわね」
気温は24℃ぐらいであり、暑くも寒くもたいしてない。
空調はコロニー全体に聞いており、朝と夜で気温差こそあれど激しくはなく、大体19℃から26℃を推移している。
それでも、元来暑がりに加えて、ラスターが行った第三倉庫ではあまり使っていないため気温はかなり低く――カンラギ的には適温であった。
ばさっと服を脱ぎ捨てて下着姿になり、エアコンからの冷気に身を当てて、じんわりと
ほんとはシャワーなんてことをしてみたくもあるが、今は休み時間ではない。
バレなきゃ問題ないだけで、バレたら
「揺ら
あられもない姿のまま、先程見送った男のことを思い出す。
一振りで、あっさりと
しかも――それは力の
他には一体どんな力を秘めているのか……
カンラギは胸を
シズハラに対して、手を出さないという協力をするように言ったが、ラスターがしてきたのは、当然ながらというべきか協力の
他の条件としては、一切の通信
もちろんカンラギはこれを拒否。
レーダーによる探知を認めさせてもらわなければ、万が一ラスターが
どちらも普通は行えない二つのことをする代わり、レーダーによる探知の使用許可だけカンラギは引き出した。と、ラスター=ブレイズは思っている。
カンラギはキーボードを
画面や音声にザーッとノイズが走り、数秒後になんとか
『俺の戦場に、雑魚はいらねぇ!』
残虐性に満ちた、楽しそうな声が広がり、映像では敵を
情報の
ラスターは衛生サーバーのカメラによって捉えられていることや、盗聴器のことなど知る由もないが彼と交わした約束の
もしバレたら
なんせ、何も悪いことはしていないのだから……ほんとか?
約束
テレビ画面に流れる映像を見ながら、ちろりと舌を出して氷に混ざる紅茶を
「ふふっ、そっか――両方とも雑魚なのか」
目の前のテレビ画面ではラスターの
『俺の戦場に雑魚はいらねぇ!』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます