第21話 ラスターの選択
「
重い足取りをひきずりながら、ラスターは進む。
「このまま、死ぬのか?」
ここにいる戦力で、戦艦級に勝つのは厳しい。
それでも方法がないわけではない……
クラクラとする頭を
そんな欲を
(もしかしてこうなる事を望んでいたのか……? 戦艦級なんてものが見つかって、これ以上の
そのために準備はしていた――あくまで念のためでしかなかったはずなのに……
ラスターは自身の口の
「あれ? どこだっけ」
ReX用の
「これ、昨日の夜に無理矢理しまったんだろうな……」
電気をつけてもろくにわからない
使われていない場所――そして、
太いケーブルの上を歩きながら、道なりにラスターは進んで行く。
「……
今からやろうとしていること――それは自殺に他ならない。
もう少し美談っぽく話すせば自己
それなのに――
「乗りたかった……のか?」
他人のために命を投げ出す気はさらさらなくとも、どうせ死ぬなら友のために使いたいという思いぐらいはある。
だが、これからする行動が心の底からそれを理由にしているわけでは……多分ない。
ケーブルを
なぜなら、ワームビーストと戦うのは
「ふふっ」
ラスターはほんの
ここは学園コロニー、世間で要らないとされるロマンを求めて作られた、
KATANAと名付けられた悪ふざけの
毎年の入学式でしか、
つまり、これに乗って戦艦級に立ち向かうのは、
それでも――
「使わせてもらう」
ReXに近づくと、スイッチを入れてコックピットを開ける。
そうして乗り込もうとすると、先客が――人ではなくぬいぐるみがなぜかいた――いやなぜ? というか何?
「きゅーい!」
「うわっ――」
伝わらない新手の言語に、ラスターは驚く。
「えっと……何?」
「きゅーい!」
「誰?」
「きゅーい!」
「きゅーい?」
「きゅきゅーい!」
――
会話が通じないぬいぐるみと対話を取ろうとした
「はぁ、どいて」
「きゅーい!」
自動で行われる返事だが、自ら動く意思は見せない。そして、ラスターもそもそも期待してないので、自分の手で退かせようと手をのばす。
「きゅい、きゅーい!」
いきなり自発的に
「おぉ、どくか?」
「きゅーい!」
気軽には
「なんだこいつ?」
ラスターに向かって飛んできたぬいぐるみはふにゃふにゃと態勢を崩しながら、顔面ダイブで床へと突っ込んだ。
「……
「きゅーい!」
「そかそか」
何がそうかはさっぱりだが、暗いコックピット内ではよく見えなかったぬいぐるみの全身がよく見える。
意外とルーナあたりが好きそうな気がする子供っぽいお人形。
ただ人形にしては破格の1mぐらいはありそうな大きさのため、
いくらここの重力が低めであるとはいえ、両足で自立するぬいぐるみにラスターは驚く。
人によっては地に足つかない感覚を苦手とするが、機械的な
なにより、昨日見た段階ではなかった。つまり誰かが意図的に置いたと考えるべきで――誰が? なんのために?
……まぁいいや。
ぬいぐるみに対する疑問を捨て、ラスターは先へと進もうとする。
「まさか……、
こちらに視線を合わせて動く人形に、ラスターは驚いて動きを止める。
ロボットの技術も、日々上がってきているとは言われるが、それにしたって、これら全てが自動で動くとは、思いもよらなかった。
無駄に素晴らしい技術で作られた、無駄な人形――学園コロニーに相応しいおもちゃに感動しながらも、放置してReXの元に向かう。
「きゅーい」
よちよち歩きのような不安定な歩き方をして、ラスターの前に立つと構ってとばかり鳴く。
かわいらしいや、あいらしいといった感想を
――どうする?
この人形はReXの中に
「
いっそのこと、
なにより、叩き潰した後で
誰が来るのか待っていると、先程まで走っていた足音が、歩きに変わって近づいてくる。
「……カンラギ副会長?」
なぜこんなところにいるのかわからないラスターは驚くしかなかった。
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